利益率の向上が自社の戦略目標であり、かつ営業担当者が利益率をコントロールできる場合は、次に挙げる4つの問いを考えてみよう。より利益率の高い営業活動を促すためにインセンティブをどう活用すべきかについて、参考になるはずだ。

3.担当地域レベルで粗利益を測定できるだろうか?
 利益率をより重視した販売を促すには、工業用潤滑油の販売業者で成功したアプローチを使うのが最も手っ取り早い。すなわち、売上高ではなく、担当地域での粗利益に応じてインセンティブを支給することだ。ただし、医療機器メーカーの例で明らかになったように、地域ごとの粗利益を適時正確に計算・報告するのは想像以上に難しい場合もある。情報システムを駆使することで測定できるとしても、計算そのものが複雑であれば、営業部門がその指標を理解して受け入れるのは難しい。妥当なコストで測定と報告が可能ならば、粗利益に応じた報酬を支給しよう。コストが高すぎるなら、異なる形のインセンティブを検討すべきである(5と6を参照)。

4.利益率の情報を営業担当者と共有したいだろうか?
 担当地域ごとの粗利益が測定可能でも、利益率に関する情報を顧客や競合企業に知られたくない場合には、営業担当者との情報共有もしないほうが賢明だろう。一部の企業は、実際の利益率を開示しない代わりに、商品の相対的利益率を反映させて架空の粗利益を算出・代用する方法で成功している。とはいえ、代用データが多くの情報を浮き彫りにしてしまうのも事実だ。機密性が重要ならば他の方法を検討しよう(5と6を参照)。

5.営業担当者は価格を変えられるだろうか?
 担当地域の粗利益の測定と情報共有に多大なコストが伴う場合、営業担当者が自己裁量で価格を変更できるならば、インセンティブを平均販売価格と連動させる方法がある。たとえば、あるオフィス用品の会社は、平均販売価格に応じた乗数で歩合給を支払う制度を設けた。定価より3%以上安値での取引に対しては、歩合給のベース額を支払い、定価の上下3%以内の取引にはベース額に1.1を掛けた歩合を、定価より3%以上高値で販売したら1.25を掛けた歩合を支給する、という具合だ。こうした乗数を用いることで、営業担当者は、数をさばくために価格で妥協する必要がなくなった。

6.利益率の高い製品の売上げを伸ばしたいだろうか?
 上記の3と4に過大なコストが伴う場合、営業が複数の商品をそれぞれ異なる利益率で売っているならば、商品グループ別の歩合給を設ける方法がある。たとえばあるハイテク企業は、商品を2つのグループに分けてそれぞれに異なるインセンティブを設けた。1つは「戦略商品」である。戦略的に重要であり、比較的新しい製品で、利益率は平均50%だ。もう1つは「基幹商品」である。発売後時間が経っており、利益率は平均30%である。営業担当者は、戦略商品を売ると5%の歩合給が入り、基幹商品では2.5%しか受け取れない。歩合を差別化することで、利益率が高い商品の販売が促され、会社全体の利益率が押し上げられるわけだ。

 営業職へのインセンティブのあり方は、営業活動と企業戦略を整合させるうえでカギとなる。利益率が戦略目標であり、営業担当者の権限の範疇であれば、高利益率に報いるインセンティブ制度は、会社の財務目標の達成を促す有効な手立てとなるだろう。

 

HBR.ORG原文:When Sales Incentives Should Be Based on Profit, Not Revenue June 10, 2015

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アンドリス・A・ゾルトナーズ(Andris A. Zoltners)
ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント名誉教授。専門はマーケティング。営業コンサルティング会社ZSアソシエイツの共同創設者。

プラバカント・シンハ(Prabhakant Sinha)
ZSアソシエイツの共同創設者。

サリー・ロリマー(Sally Lorimer)
ビジネスライター。ゾルトナーズおよびシンハとの共著に“The Power of Sales Analytics”(ZS Associates、2014年)がある。