顧客が望む“アウトカム(成果)”を実現するサービスの提案

  サービスの提供においては、つくり手・売り手の視点に立った“プロダクトアウト”ではなく、顧客やその先のエンドユーザー企業が望む“アウトカム”ベースでのサービス提案も重要である。顧客視点・顧客志向について議論されない企業はないだろうが、たとえば次のような視点を持てているだろうか?「顧客の業界における課題は何か/顧客のCEOが抱えている経営課題は何か」、そして「その課題を解決することで、顧客の経営に対してどの程度の“アウトカム(経営成果)”がもたらされるのか」、さらに「その“アウトカム”を実現するために、自社のサービスはどう貢献するのか」。

  顧客の求めているスペックを正しく理解し、それを自社製品の機能・性能・品質に反映させるための「もの売り」のケーパビリティと比較すると、サービス事業では、顧客の経営課題と課題を解決することによるアウトカムを見出したうえで、自社のサービスの貢献の仕方を考えるというまったく異なるケーパビリティが求められる。言い換えると、これまで伝統的なメーカーにはまったく求められてこなかったケーパビリティが、求められていると言ってよいだろう。そして、伝統的なメーカーが持っていないケーパビリティであるがゆえに、いち早くそういったケーパビリティを獲得したメーカーがサービス事業転換を成し遂げ、市場でのポジションを強化していくのである。

  Siemensは1990年代、製品の仕様・価格決定権に加え、利益責任(粗利)も工場から営業に委譲する意思決定をし、いいものをつくって納める「もの売り」からグローバルのさまざまな顧客のニーズに合った仕様・価格にして売上げを伸ばす方向に舵を切った。そして、2000年前後のソリューション企画強化のタイミングでは、重点顧客150社(30~50業界)からニーズを抽出し、Siemens Oneが中心となってソリューション構築を実施するなど、よりサービス事業の方向へと、ガバナンスモデルを進化させてきた。Siemens Oneとは、サービス事業視点で新たに整備された事業部横断のプロフェッショナル・チームであり、各事業部から人材を異動させ、そのうえで足りないケーパビリティは外部から人材を採用することで強化している。さらに近年では、顧客に広範囲・長期のサービスを提供し、継続的な利益を確保する、IIoTをはじめとするデジタルサービスでの継続的な顧客囲い込みを目指している。Siemensは20年以上も前から「もの売り」からの脱却を目指して取り組みを進めてきており、最近になってようやく成果が目に見える形で出てきている。「もの売り」中心になりがちな既存事業部のみに成長を任せるのではなく、コーポレートが主体となって組織・体制/ケーパビリティを大きく変化させることでサービス事業転換を成し遂げ、そしていまなお市場でのポジション強化を目指しているSiemensから、サービス転換を目指す企業が学ぶ点は多い