実験の結果はこうなった。高獲得者たちは、5分以内に実際に食べられる量よりも平均で約3倍も多くチョコを獲得した。しかも、彼らは5分以内に食べられる量をあらかじめ見積もっていたにもかかわらず、それよりも多く手に入れることを選んだ。言い換えれば、食べられる想定量よりも多くのチョコを手に入れるために――そしてそれらを返却しなければならないとわかっていながら――自発的に(騒音という)苦痛に身をさらしたのだ。

 高獲得者と低獲得者が聞いた騒音の回数に違いはなかったので、前者だけが過剰に稼ぐ結果になった。低獲得者が得たチョコの数は、食べられると自分で想定した量に達していない。一連の結果から、研究者らはこう結論づけている。人は報酬の大小に関係なく、できるだけ多く稼ごうとする。稼ぐことへの願望は、どれだけの報酬量を欲しているか/必要としているかに基づくのではなく、その仕事をどれだけ達成できるか/その仕事にどれだけ耐えられるかに基づいているのだ。

 さて、あなたは「多くの人にとって仕事は苦痛ではない」と考えているかもしれない。我々にとっても(少なくとも大半の日々は)確かにそのとおりだ。仕事が好きである限り、週末に働くことの何が問題なのか――。

 答えを再び研究に求めると、人の認知資源には限りがあり、時間とともに枯渇していくため、補充する必要があることがわかる。認知資源とは、私たちの行動、願望、そして感情をコントロールするために重要なものだ。

 筆者の1人スターツは、働きすぎによる認知資源の枯渇が招く悪影響を検証したことがある(ペンシルバニア大学ウォートン・スクールのヘンチェン・ダイとキャサリン・ミルクマン、ノースカロライナ大学のデイビッド・ホフマンとの共同研究)。米国内の37の病院に勤務する4,157人の医療提供者を対象に、手指衛生の実態を3年にわたって追跡調査した。そのデータを分析した結果、典型的な12時間シフトの開始から終了までの間に、手洗いの順守率は平均8.7%低下することが明らかになった。

 この順守率の低下は、医療提供者の仕事が相対的にきつかった日(たとえば、より多くの患者を診た日)にいっそう顕著であった。筋トレを続ければ体が疲れるのとまったく同様に、認知資源を繰り返し使えば自己規制力が低下するのだ。ただしシフトの合間に休憩を取るほど、認知資源の回復が見られた。つまり、より長い休憩の後には手洗いの規則を順守する傾向が高まっていた。

 負荷の多い仕事は、従業員の活力とやる気を喚起するかもしれない。だがそれに伴うプレッシャーに直面すると、本来の職務(たとえば患者評価、医薬品の配給など)をやり通すことに集中するあまりに、他の(二次的な)作業に向ける注意がおろそかになりかねない。疲れている時には特にそれが顕著だ。医療提供者にとって、手洗いは優先順位が低い作業かもしれない。だから1日の勤務時間が経過するにつれ、意識が手指衛生ガイドラインから逸れていくのだ。

 実際、認知資源が枯渇すると、倫理基準に従うことが難しくなる場合がある。筆者の1人ジーノが実施した別の一連の実験でも、認知資源を消耗した被験者は、さまざまな課題で対照群よりも不正行為を働く傾向が高かった。

 仕事への情熱、そして自分は生産的だと感じることで得られる喜びが、私たちを週末にこれほど働かせるのだろう。しかしそれでも、リフレッシュする時間を必ずつくる必要がある。この点について、エナジー・プロジェクトCEOでありThe Way We’re Working Isn’t Workingの著者でもあるトニー・シュワルツは有益なアドバイスをしている。すべての行動に「強烈な意図(fierce intentionality)」を持って臨むことが、仕事にも私生活にもプラスになるということだ。つまり、仕事中は仕事に全力を注ぎ、休む時は徹底的にリフレッシュすることが肝心なのだ。


HBR.ORG原文:It’s the Weekend! Why Are You Working? April 10, 2015

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フランチェスカ・ジーノ(Francesca Gino)
ハーバード・ビジネススクール教授。経営管理論を担当。著書に『失敗は「そこ」からはじまる』(ダイヤモンド社)がある。

 

ブラッドレイ・スターツ(Bradley Staats)
ノースカロライナ大学キーナン・フラグラー・ビジネススクール准教授