「人」を中心とした日本のものづくりに勝機あり

――ドイツのインダストリー4.0だけでなく、米国では、ゼネラル・エレクトリックなどがインダストリアル・インターネット・コンソーシアムを立ち上げるといった動きもあります。世界のIoTの潮流のなかで、日本の製造業は生き残れるのでしょうか。

 ドイツのIoTが自動化(FA)に軸があり、その生産システム自体の販売を目指していると思います。一方、米国のIoTは、モノを遠隔操作して情報を収集し、人工知能などで分析した結果を戻す、つまりITの部分に軸足が置かれていると言っていいでしょう。

 日本はその中間を目指すべきだと考えています。日本の企業はネットワークをはじめとしたITの分野では世界で活躍しているとは言えませんが、「モノ」が介在するところに勝機があるのではないでしょうか。ビット(デジタル)の世界では、比較的人間が思ったとおりになったとしても、アトム(物質)の世界ではなかなかそうはいきません。だからこそ、日本ならではの職人技や現場の創意工夫などが強みを発揮できるはずです。

 また、私は日本の中小企業にも大いに期待しています。現在、IVIの活動とは別に、中小企業を中心とした「つながる町工場」という取り組みも進めています。競合する企業の社長同士が、さまざまなデータやノウハウを出し合い、あるべき姿を議論しています。これは社長同士の信頼関係があってこそできることとも言えます。

 中小企業では、ITプラットフォームを構成するソフトウェアのコストが大きな負担になっていますから、それを共通化することで、コストを抑えながら生産性を同時に高めることが可能になります。大手企業は内部統制の関係で情報開示が難しく、意識改革のハードルが高いですが、その点、中小企業は柔軟です。
「オープン化」という観点では、大企業より先進的な取り組みができるのではないかという期待感をもって、応援しています。IoTという新しい潮流のなかで、むしろチャンスととらえ、機動力をもって活躍をしてほしいです。

 そして、大企業でも中小企業でも、ものづくりの現場を完全自動化して本社で遠隔操作をする世界ではなく、現場に「人」が介在してコアな品質を支えるという、日本ならではの仕組みが構築されることを期待しています。

 日本企業はITやIoTを活用しながらも、最後は「人」を中心としたものづくりで、勝負してほしい。さらには、日本の若い世代にそういう日本のものづくりの良さを受け継いでもらいたいと思っています。

(構成/小林麻里 撮影/西出裕一)