「ゆるやかな標準」でオープンな仕組みを構築する

――IVIにはトヨタ自動車、三菱重工業、日立製作所といった大企業から中小企業まで幅広い企業が会員として参加しています。このような企業間の垣根を超えて標準を策定することはできるのでしょうか。

  確かに、異なるプロセスを持つ企業間で厳密な標準を定めるにはさまざまな側面で困難が伴います。また、日本の製造現場では画一的なITの仕組みが敬遠される傾向があります。現場ではエクセルが多用されているけれど、トップダウンで導入される管理システムは使いたがりません。それは、日々状況が変化する現場に、固定的なITシステムが対応し切れないという問題があるからです。

 そこでIVIでは「ゆるやかな標準」をコンセプトとし、カスタマイズする余地を残すことにしました。つまり、たとえば5~6割を標準化し、残りは現場の状況に合わせるといった標準を目指すことにしたのです。

 「ゆるやかな標準」の策定を目指すに当たり、まず企業間で共通する領域を、それ以外の「競争領域」と区別し、「協調領域」として再定義しました。協調領域においてオープン化し、相互に連携をすることを目指します。そして、異なる企業間で共有できるリファレンス(参照)モデルを構築しようとしています。

 いわば工場にあるそれぞれの生産ラインの中は鍵のかかった自分の家、つまりブラックボックスですが、その前に共通で使用できる道路を整備するというイメージです。そして協調領域を中心に、参加企業同士が現場で抱える課題について、ディスカッションを行う場も設けています。 

――日本の製造業は非常に先進的であるというイメージがあります。課題はあるのでしょうか。また競合同士の間でも、その課題は共有できますか。

 IVIを通じて、大企業であっても現場でさまざまな課題を抱えていることを再認識しました。また、競合同士であっても課題について白熱した議論が交わされています。これは驚きでもありました。

 そして、現場のさまざまなプロセスで人やモノ、情報やその流れがどのようにあるべきかを検討するための事例を「ビジネスシナリオ」という形で作成しました。

 日本ではコンセプトから入るよりも、事例を参考にするほうが好まれる傾向があるため、ビジネスシナリオという具体的な形に落とし込んだほうがよいだろうと考えたからです。この点はまずコンセプトから入るドイツとは異なる点でもあります。

 現在は、複数の課題に対して、19のビジネスシナリオを作成し、それに対するワーキンググループを立ち上げています。