「運命を決めるのはテクノロジーではない、私たちだ」

 冒頭でも記した通り、ここ数年、AIを巡ってさまざまな議論が展開されている。

 ポジティブな側面に目を向ければ、自動運転によって交通事故のない社会が訪れる可能性などが考えられる。一方、ネガティブな側面に目を向ければ、ホーキング博士などが危惧するように、軍事への応用によって悲惨な事態が生まれる可能性もあるかもしれないが、現時点で、未来の可能性について否定することも、肯定することもできない。

 いま本当に必要なことは、新しいテクノロジーを恐れることでも、過度に賛美することでもなく、まず目の前の事実を事実として認識することではないか。事実に立脚しなければ、議論そのものが成立しない。この本が秀逸だと感じる点の一つに、専門家でなければ理解が難しい言葉がほとんど使われていないことが挙げられる。その意味で本書は、(本の厚みに多少の抵抗感はあるものの)AIと人間の未来を真摯に考えるための入門書としての価値が十二分にあると感じる。

「運命を決めるのはテクノロジーではない、私たちだ」

 いかなる技術であれ、それをどう使うのかは人間が決めることだ。行き過ぎた悲観もせず、極度に楽観視もせず、AIを取り巻く環境を冷静に俯瞰するためにも、ぜひ手に取っていただきたい作品である。