さらにTGBLの注目すべき点は、このステージに安住せず、第3のステージを目指して2005年以降に新たなアライアンスを猛烈な勢いで繰り返していることにある。近年のアライアンスは数も多く多様だが、方向性は4つに分類できる。

 第1の方向が、紅茶を核としたうえで、茶事業の幅の拡大である。同社は2005年以降、南アフリカの茶のパッカーに出資するなど紅茶も強化しつつ、ハーブティーとフルーツティーの欧米企業を複数買収している。さらに、近年は健康志向で緑茶の市場性が高まる中、2007年には中国最大の緑茶輸出企業と合弁を組み、調達源を確保している。

 第2の方向が、コーヒーである。コーヒーは茶と並ぶ嗜好飲料の代表格であり、市場規模も大きい。タタ・グループは以前からグループで保有していたコーヒー企業と茶事業を統合し、現在のタタ・グローバル・ビバレッジスを発足させた。さらにその間にも、2006年に米国、2009年からロシア、2014年に豪州のコーヒー会社を次々に買収し、コーヒー事業の拠点と規模を拡大している。

 第3の方向が、それ以外の新しい飲料事業への拡張である。同社は2007年からミネラルウォーター企業に出資しているほか、2010年には米国の栄養ドリンクにも出資した。さらに同年からペプシコと合弁を組み、健康ドリンクの新事業開発に投資している。またスターバックスと合弁を組み、インドの大都市でスターバックスの店舗を展開して新しい下流事業を模索している。

 最後に、第4の方向として、同社は祖業である紅茶農園の売却を進めている。すでに南インドでは農園を別会社として切り出して過半を売却し、主として農場労働者の所有に移行している。北インドでも、農園を別会社化し、茶栽培を素材とした観光業の育成と農業ソリューションの事業化を模索し、持続可能な農業の先進開発拠点としての性格を強めている。

 このステージに到ると、同社はもはや紅茶にとどまらず、自然・健康飲料のプロデューサーとして独自の価値を追求する段階に入っている。同社の強さは、今ある社内の強みにこだわるのでなく、企業買収と提携を通じて必要な強みを吸収し、事業領域や提供価値まで根本的に作り変えてしまう点にある。自社にない資源や知識を買収や提携で巧みに消化し、その新しい強みを核に事業領域やビジネスモデルさえ変えていく。海外の有力ブランド買収を契機に、このような成長ストーリーを実現していくEMNCは少なくない。