M&Aを通じ、自らのビジネスモデルを変え生まれ変わる

 第2のパターンとして、JBSのように1つのモデルを複製拡張するのでなく、外部リソースをテコにして自らの事業を根本的に変えてしまう企業もある。その典型例が、タタ・グローバル・ビバレッジス(TGBL)である。

 TGBLはインドの巨大財閥タタ・グループの1社で、茶・コーヒーのサプライチェーンの上流から下流まで、栽培、トレーディング、ブレンド、商品生産、販売を行う。売上の7割は紅茶、3割はコーヒーとミネラルウォーター等で、世界2位の紅茶ブランドであるテトリー他、有力なブランドを複数持つ。世界40カ国以上で展開し、海外売上比率は7割近いグローバル企業である。

 TGBLの驚くべき特徴は、M&Aと海外展開を通じたその変身ぶりである。実は、同社は少し前までインド国内の農園経営を主軸とした企業だった。その進化は3つのステージをたどっており、それぞれの節目にあったのは海外企業のM&Aである。

 TGBLは、1962年に英国企業とタタ・グループの合弁企業として生まれた。同社はアッサムや西ベンガルを中心に多くの紅茶農園を経営し、数万人の農場労働者を雇用した。当初は、インド有数の紅茶農園企業ではあるものの、有力ブランドも海外や消費者向け流通へのアクセスも持っていなかった。

 この第1ステージにおいて、同社は2つの成長戦略を模索する。第1の方向が、付加価値の高い川下の消費者向けブランドパッケージ商品展開である。しかし、1990年代から本格的に国内で消費者向けブランドを展開したものの、首位のリプトンが圧倒する市場で、大差をつけられ2位に甘んじていた。

 そして、第2の方向が海外展開であり、同社は早くから米国などに法人を設けた。しかしブランドも際立った優位性もない中で、海外事業の成長にも限界があった。この段階では、同社の強みの源泉はあくまでインド国内での上流(農園)から下流(消費者ブランド)までの一体性にあった。

 この状況を打破するために、同社は第2のステージとして、紅茶のグローバルブランドマネジメントで勝負できる企業へと、M&Aを活用して脱皮を目指した。そのため、2000年に英国のテトリー・グループを約3億ポンドで買収した。これは当時のインド企業による最大規模の海外買収の1つであり、業界を震撼させた。

 テトリーは1837年創業の老舗であり、1953年に初めてティーバッグを開発するなど、商品イノベーションにも定評がある。また何よりも、世界2位の消費者向けブランドに加え、調達、ブレンド、ロジスティクスも世界数十カ国にまたがるオペレーションを持っていた。

 ここでTGBLが取り組んだのが、ブランド資産とグローバル経営のノウハウを持つテトリーに自らが一体化し、全く新しい企業に生まれ変わる変革である。もちろん両社は事業領域も文化も全く違い、また買収先の本格統合は初めての経験で、当初は苦戦と混乱が続いた。しかし、R&D、IT、ファイナンスの組織を両社で合体させるなど組織を骨格から改造し、5年近い歳月をかけて同社は統合を完了した。

 結果として、同社はインドの紅茶調達に加え、強力なブランドをグローバル展開する組織へと変化した。また、幅広い国の嗜好を理解することで、ブレンドとフレーバーの選択肢を拡大し、またテトリーブランドの輸出を加速した。