JBSの成長には3つのポイントがある。

 第1に、同社は将来シナリオを考慮して、自社が取るべきリスクを明確に決めている。今後も世界人口は増え、新興国は所得が上がり、食肉需要は増え続ける。同社はそのメガトレンドを見据え、食肉加工の先進供給地の上位企業を中心に買収している。先々まで競争優位を守るのに必要な、ブランドと安定供給のエコシステムを、今しか買えない優良案件の買収で囲い込もうとしているのである。

 さらに、同社は為替を含めた環境変化を想定して、取るべきリスクを決める。同社が海外買収を始めた頃の為替相場は歴史的な自国通貨(レアル)高であり、CEOはレアル相場が下落するシナリオを徹底分析して戦略を描いたといわれる。

 第2に、同社は世界共通の明快なシナジー創造のロジックを持っている。それは、家畜調達から加工・流通における、規模の経済と知識移転である。同社は、仕入先の農場に品質マネジメントと輸出用の規格を導入し、物流網に投資するなど、規模を生かしたサプライチェーンの強化を促進してきた。

 さらに肉加工の場合、生産拠点が増えて地理的に分散することは、感染症のリスクを減らす効果もある。また、殺虫剤・動物遺伝学・食品添加物など、外部の技術革新を世界から集めて各地で様々に試せることは、競合との差別化につながる。買収による規模拡大は、そのままこれらのメリットに直結するのである。

 そして、シナジー創造のロジックを支える3つ目のポイントが、買収先の経営再生の独自ノウハウを磨き続けることである。同社は、もともと単純化・明確な説明責任・あらゆるコストの徹底削減を哲学としている。そしてこれを買収先に適用することで、不採算な買収先の改革再生を得意技としている。

 2007年の米大手スウィフト・フーズ買収を例に取れば、再生手法のカギは2点に集約される。第1のカギとしてまず手をつけるのが、本社機能の単純化である。具体的には、階層を半減するなど、階層と中間管理職を大きく減らす。またCEOまで直接参加し議論するマネジャー会議を導入し、間接コストを徹底管理する。そこでは、小額費用も含め全費目について目的と責任者を明確化し、必要に応じCEOが自ら問いただすことで、予実管理の徹底を植えつける。合わせて、部門を超えた貢献を促すため、全社の業績を重視した成果報酬制度に改訂する。

 一方でもう1つのカギとなるのが、工場での生産性改革である。そのポイントは、最初から決まった生産オペレーションのベストプラクティスを移植するのでなく、課題を浮き彫りにし現場で解を作らせる手法にある。

 たとえばスウィフトでは、工場単位で15のKPIを日次管理し、また経費使用状況を工場マネジャーに全て公開させた。信賞必罰の徹底と共に、夜勤導入によるシフト増、生産ロスの削減(特に肉のカット手順による削ぎ落とし残しの極小化)、水道・電気を含む間接費用の徹底節約が現場で改革として取り組まれた。結果として、スウィフトでは約1年で一日あたりの処理頭数が約4割増え、1頭あたり生産コストは2割以上減り、人件費を除く費用全体で数千万ドルのコスト削減に成功したという。

 日本企業のM&Aでは、そもそもシナジーが何なのか明確でなく、また買収後も厳しい介入ができず買収先に大きく委任したまま、結果を天に任せる例が多い。翻ってJBSはこのようなシナジーの実現手法を確立し、買収先をグループに加えるたびに、新たなコストと生産性の改善余地を手に入れる。そして実践を通じ、さらに手法を磨き上げていく。規模の拡大を優位性につなげる単純なルールを作り上げ、その拡大再生産のために外部資源(同業他社)を次々に飲み込み、血肉として急成長していく。それが、EMNCが外部資源とネットワークを活用する第1のパターンである。