●音楽を超えて

 我々は上記の研究を2015年の5月初めに完了し、HBSで考案した主要な戦略を実施し始めた。5月半ばにはベンチャーキャピタルのマシーン・ショップ・ベンチャーズを立ち上げた。「テクノロジーとデザインを通じて、人々とイノベーションを結びつける」というリンキン・パークの精神に合致する、アーリーステージからグロースステージにある顧客志向の企業に投資していく。時代精神に合わせてブランドを維持していく方法ついて、我々が知っていることを投資先と共有するつもりだ。そして相手の企業文化やビジョン、新規事業の創出について我々が学ぶことも楽しみにしている。すでに投資したベンチャー企業にはリフト(Lyft:配車サービス)、シップ(Shyp:配達サービス)、ロビンフッド(Robinhood:株取引アプリ)、ブルーボトルコーヒーなどがある。

 また最近では、リサ・キッドを採用してブランド拡張とマーチャンダイズ事業の強化も図っている。彼女は、グウェン・ステファニー(ノー・ダウトのボーカル)のファッション・ブランドであるL.A.M.B.と原宿ラバーズの事業開発を担った人物だ。そして戦略的思考を促進するために我々は、ビーツ・エレクトロニクス(Beats by Dreのブランドで知られるヘッドフォンメーカー)で戦略、経営企画、市場分析を担当していたマイケル・セバスキーを招き入れた。

 誤解のないように言えば、我々は今なお音楽業界に身を置いている。ただし音楽をつくって売る活動は、事業群全体の中ではサポート的な位置づけだ。バンドは今年の夏に中国の5つの都市でメインを務めるツアーの準備をしている最中だが、同時にテクノロジー企業や、消費者ブランド、ベンチャーキャピタルと会って提携のチャンスについて話し合う計画も立てている。もちろんいつものように、ステージで演奏しファンと会うつもりだ。だが現在のリンキン・パークは素晴らしい音楽をつくり続けながらも、絶えず進化する文化とビジネスの環境で活動していくための、より有利な体制を整えている。


HBR.ORG原文:What Happened When Linkin Park Asked Harvard for Help with Its Business Model June 23, 2015

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カイル・ベリー(Kiel Berry)
リンキン・パークが所有・経営するマシーン・ショップのエグゼクティブ・バイスプレジデント。以前はJPモルガンの投資銀行部門、およびクリエイティブ・アーティスツ・エージェンシーに勤務。著書にStunt: Navigate The Journeyがある。