●ハーバード・ビジネススクールの支援を仰ぐ

 この重大な戦略転換について熟慮するために我々は、メディアとエンターテイメント企業向けのマーケティング戦略の第一人者、ハーバード・ビジネススクール教授のアニタ・エルバースの門戸を叩いた。エルバース教授と彼女の教え子たち――ブレア・ロマスキー、ニール・ウス、ジンピン・チャンと共同で、リンキン・パークのビジネスについて1学期をかけて独自の調査研究を実施したのだ。

 研究の第1フェーズでは、音楽業界のイノベーターたちのビジネスについて広範な調査を行った。たとえばタイラー・ザ・クリエイター(ラッパー)のマーチャンダイズ戦略、ジェイ・Zが手掛ける一連のジョイント・ベンチャー、そして俳優ジャレッド・レトによるテクノロジーベンチャーへのインキュベーションと投資。またトレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズのリーダー)とビーツ・ミュージック(定額制音楽配信サービス)のクリエイティブなパートナーシップの強み、ファレル・ウィリアムスが設立したコンテンツ・プラットフォーム「i am Other」の多角化、そしてビヨンセが運営するマネジメント会社、パークウッド・エンターテイメントのポジショニングなどを分析した。

 さらに我々は音楽以外の領域からも知見を求め、主力製品の周辺に他ジャンルとの強力な親和性とエコシステムを構築している革新的なブランドを分析した。印刷物からビデオコンテンツまでを手掛けるメディアプラットフォームのVICEが、ファッション、テクノロジー、デザインからアルティメット・ファイティングまでをカバーし進化していった軌跡。レッドブルがスポーツとの親和性を高め、レース競技とエクストリーム・スポーツの世界に浸透していったブランド戦略。さらに、ニッチでありながらフォーチュン500企業の間で人気を博しているクリエイティブ集団、ステイプルデザインやサーフェス・トゥ・エアーなどにも目を向けた。

 ここまでの第1フェーズで、我々は以下を実践する必要があることを学んだ。

●他社がパートナーとして加わりたくなるような、差別化されたブランド・エコシステムを構築する

●クリエイティブなコンテンツを用いて、ブランドの視点を伝える

●ブランド理念を明確にし、それがあらゆるタッチポイントで確実に反映されるようにする

●複数の事業を築いて収入源を分散化し、財務リスクの軽減とブランドメッセージの拡張を図る

●世界的な影響力を有する、より広いコミュニティまたはネットワークと提携し、最前線の文化的トレンドに乗り続ける

 第2フェーズでは、リンキン・パークのエコシステムを分析し、我々の新しい長期ビジョンを実行するためのフレームワークを設計した。マシーン・ショップを再編して、ブランド・エージェンーというモデルから多面的イノベーションを行うモデルへと移行したのだ。この新モデルは4つの事業領域、すなわちビデオコンテンツ、グローバルなブランド・パートナーシップ、マーチャンダイズ、そしてベンチャーキャピタルを軸としている。