●新しいモデル

 私はこの時、岐路に立つリンキン・パークと出会った。漸進的な変化ではなく真のパラダイムシフトを求めていた彼らは、私をマシーン・ショップのエグゼクティブ・バイスプレジデントとして雇った。私には(JPモルガンやクリエイティブ・アーティスツ・エージェンシーで培った)マーケティング、事業開発、そして金融の経験があったが、伝統的な音楽事業に関しては門外漢だった。だがリンキン・パークの世界的な人気、そして音楽という狭いカテゴリーの外にある潜在的なビジネスチャンスに目を向けた時、そこに未開拓の「ブルー・オーシャン」が広がっていると感じた。

 従来とは異なる種類のパートナーシップ、そしてクリエイティブなデザイン思考、という2つを軸としたイノベーションに重点的に取り組むために、我々はマシーン・ショップを改革していった。1年をかけて、ファッション、デザイン、テクノロジーの分野における事例研究に尽力した。この下準備を終えた時点でわかったのは、これらの分野でのイノベーション活動を支えるためには従来の音楽マネジメントのモデルを進化させる必要があるということだ。ほとんどのマネジメント会社は音楽業界の専門家、そしてマーケティング活動をサポートするデジタル部門で構成されている。だが我々が目指すものは、その構造の中には存在しなかった。

 そこで我々は2014年の終わりに、外部のマネジメント・エージェンシーから分離し、中核事業の運営をすべて自社でやることにした。ツインボーカルの1人で創立メンバーのマイク・シノダの言葉を借りれば、「バンドが今後何年もかけて追求していく新たな計画を支える、多彩な人材を揃えたチームを社内に築くことが目標」だった。この戦略によって、我々は音楽活動の売上げを補完すべく、さまざまな収益モデルを自由に模索できるようになった。当社は今やテクノロジー系ベンチャー企業のように、ヒエラルキーが少なく機敏に動いている。

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Photo by Lorenzo Errico