我々はまさにこの課題に対処するための分析ツール、「PMSマップ(Pioneer-Migrator-Settler Map)」を開発した。このたび新たに上梓した『[新版]ブルー・オーシャン戦略』でも説明しているが、収益性の高い成長を目指し企業の方向性を策定するうえで、このツールを利用すれば事業ポートフォリオの長期的な変遷を把握できる。

 現行の事業ポートフォリオから、将来どの程度の成長が見込めるのか――このマップを使えば、それを1つの単純な図で見ることができる。そして、今後の展望を明るくするにはどう舵を切ればよいかも見て取れる。マップ上で、「安住者(Settler)」とは二番煎じ的な価値を提供する事業のことを指す。「移行者(Migrator)」とは、競合他社よりも改善した価値をもたらす事業である。そして「パイオニア(Pioneer)」とは先例のない価値を提供する事業――つまりブルー・オーシャンの製品・サービスだ。どの企業にとっても成功のカギとなるのは、これら3領域――言い換えれば、レッド・オーシャンとブルー・オーシャンの両方――をポートフォリオ内でバランスよく保つことである。パイオニア事業が模倣された後でも、新たなパイオニア事業の創出によってバランスを維持しなければならない。

 例として、アップルの事業ポートフォリオの変遷をマッピングした下図を見てみよう。1997年にアップルが擁していたのは、ただ1つの移行者(マッキントッシュ)、そして安住者としてわずかな周辺機器とサービスのみであった。これでは将来の見通しは危うい。2003年になるとマップの様相は大きく変わる。2つのパイオニア(iPodとiTunes)が加わり、マッキントッシュは1998年のiMacによって「格上の移行者」になった。iMacはスタイリッシュな色、使いやすさ、インターネットへの容易な接続、という特性を最初に備えたデスクトップ・コンピュータだった。

 マップに示されているように、2008年までにiPodは模倣品の登場により移行者のカテゴリーに沈んでいるが、その後iPhoneとApp Storeによって次のブルー・オーシャンが拓かれている。そしてiPhoneとiTunes Storeが移行者のカテゴリーに落ちると、今度はiPadが登場する。つまりアップルは、たとえ各事業が競争によって別のカテゴリーへと変容しても、パイオニア、移行者、安住者の健全なバランスを長期的に保つことで、成長可能性を最大限に高めているのだ。