知らないふりが会社の文化になるのが怖い

社員に自由裁量を与える方針は、篠辺さんが就任されてからでしょうか。

 いえいえ、これはもうずっと前からです。国際線の赤字が続いていた頃、「お前の会社は至らないところばかりだ」と叱られながらも、「だけど、CAがあれだけ一生懸命やってくれたら次も乗らないわけにはいかないよな」とおっしゃってくださるお客様がたくさんいました。

 20世紀の頃から、現場ではそうした意識で仕事をしていたと思います。ところが、いまは会社が大きくなってしまったものだから、それができにくくなってしまった。これはまさに大企業病と言えるでしょう。

「大企業になれば知らないふりをしても生きていけることはたくさんありますが、それが文化になるのが怖いのです。それを見ないようにしていくと、お客様はどんどん離れていきます」

 たとえば、私は得意先様を回りながら要望を聞くようにしていますが、ある方から「国際線には黒飴がない」と言われたことがありました。国内線で出している黒飴は人気が高いのですが、なぜか国際線には積んでいなかったのです。

 その後、他のお客様からも同じ要望を聞いていたことがわかりました。調べてみると、できない理由はない。つまり、現場では把握していて、すぐに改善できることがされていなかったわけです。それは、お客様の声が組織のどこかでストップしてしまっていたことが原因です。

 その時、当社は大企業病にすでにかかっていると悟りました。大企業になれば知らないふりをしても生きていけることはたくさんありますが、それが文化になるのが怖い。それを見ないようにしていくと、お客様はどんどん離れていきます。いまはそんな危機感を強く持っています。現状に慢心して、自分たちが天狗になることが最大の弱点になると思っています。

反対に、現場主導で進められた画期的な企画などはありますか。

 その一つが、ギャラクシーフライトです。昨年、羽田・沖縄線では、夜中の貨物便を使って、お客様にも乗っていただきました。

 いま国内線に深夜便はありませんが、マーケティングの担当者は東京と沖縄間なら夜中でも需要があるだろうと思っていました。ただ、そのために飛行機まで用意することまではなかなかできず、もどかしさを感じていたのです。それが昨年の夏、夜間の貨物専用機を整備に出すことになり、その間、旅客機を使って貨物を運ぶことになりました。

 それを聞いたマーケティング部門が、それならお客様も相乗りさせたほうが効率がいいというシミュレーションをつくってきました。オペレーション部門など現場でうまく調整して、やってみたら好評でした。

 そこで、今年は年間計画段階から旅客便を深夜発着で夏場に設定しましたが、大変好評です。昨年は急なことだったため、沖縄サイドには一般社員の現場配置ができず、夜中は管理職が出てお客様の対応をしましたが、今年は最初から勤務体制も整えています。

 そうした新しい取り組みを即座にできたのは、ホールディングス制を導入し、ネットワークやレベニューマネジメント、マーケティング計画などのマーケティング機能を一つの部門に集めたからだと思います。マーケティング室の室長がOKを出せばいろいろなことを決められるので、飛行機に余裕があるのならこんな企画はできないかといった提案が現場レベルできるようになりました。

 現場発でどんどん提案をしてほしい。前回も申し上げましたが、30点かもしれないけれど挑戦的な企画が上がってこなければ、成長することはできないと思っています。

 

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