マーケティング活動とは
有権者や消費者を映す鏡である

 日本の選挙活動、日本の政治家の地元での活動、日本の新人候補者の「公認候補」者活動が、ここまで厚く、緻密に行われていることにはそれなりの理由がある。顔を見せて、挨拶をして、握手をして回ることが、得票につながっている実感があるからこそ、彼らはそうした活動を続けている。また、「職を賭して」と言えることが有権者に受けるからこそ、あえてそれを強調するのである。

 どんな行動がどれだけ効果が生むのか(生まないのか)がわかりづらいなか、中選挙区制時代の名残で、止むにやまれず続けている部分もあるかもしれない。しかし、それなりの効果があり、「がんばっているから」「よく見るから」「握手したことがあるから」という理由で私たちが投票していることが多々あるのも事実なのだろう。

 日本の有権者である私たちは、政治家の参入障壁を異常に高め、投資している時間に対して実際に有権者と対話する時間は少ない地元の活動に、国会議員を本当に釘づけにしたいのだろうか。無意識にではあるが、私たちのこうした行動が、どんな人物が政治家になるかに影響を与え、彼らの当選後の行動にも影響を与えている。政治家が政争に明け暮れていると嘆くのであれば、自分たちの投票行動も見直すべきなのかもしれない。

 日本のビジネスでも同様に、戦略立案よりも現場業務の改善と進化を重視する傾向は、広い意味で、これまでの最終消費者やB2B顧客の好みを表しているのだろう。これまで、より軽く、より小さく、より安いものが評価されてきた。また、商品には何の問題もなくても、パッケージが少し汚れただけで、消費者や小売店はメーカーを批判した。だからこそ、「良いものをつくれば売れた」のであり、それを重視する「モノづくり」中心の企業風土が定着してきた。

 しかし、国内経済の成熟により、必然的に企業の成長源が海外にシフトしていくなか、国内の顧客に最適化した企業風土のままで本当に良いのだろうか。企業にとってのブランディングの対象は、何も顧客だけに留まらない。株主へのIR活動、従業員の採用・維持活動、社会へのCSR活動とその対象は広がっている。海外の顧客、従業員、社会、株主を意識したブランディングがなされるべきではないか。

 いま、こうした「モノづくり」中心の企業風土に対して、新たな取り組みも出てきている。

 たとえば、2012年に創業されたLinkersは、国内・海外の大手企業と、グローバルトップニッチの技術を持つ国内中小企業のマッチングを始めた。「モノづくり」中心でマーケティング活動が行き届かないなか、全国に張り巡らされたLinkersのコーディネーターのネットワークを通じて、中小企業の技術が、技術を探す大企業にマッチングされる。社長の前田佳宏氏は、一部の優良中小企業を束ねて、それをファイナンスやマーケティング面から支援する「日本ものづくり株式会社」へと構想を広げている。

 このように、選挙キャンペーンにおいてもビジネスの製品展開においても、そこでどのようなマーケティング活動が行われているかは、対象としている有権者や消費者を映す鏡とも捉えられる。だからこそ被写体としての私たちは、現状に不満があれば行動を見直す余地があるのではないか。

 マーケティング活動の場合、その成果が見えづらいこともあり、プレイヤーの側にも「選挙マニュアル」や「語り継がれる成功体験」、「企業風土」という形で慣性の法則が働く。そのため政党も企業も、一昔前の有権者像や消費者像を追いかけていないか、マーケティング戦略とその体制を不断に見直す努力が求められるのである。