ビジネスの現場に見るネガティブキャンペーン

 日本のビジネスでは、あからさまなネガティブキャンペーンを見ることはあまりないが、事例がないわけではない。

 少し前のことになるが、「どうも、マックです。こんにちは、パソコンです」というフレーズで始まるCMシリーズがあったのを覚えているだろうか。パソコン役の人間が、あか抜けないビジネススーツを着て、ウイルスで風邪をひいたり、クラッシュして倒れたり、太って動きが遅くなったりする。その一方で、マック役の人間はカジュアルでスタイリッシュな服を身にまとい、クールな姿勢を保ちながらパソコンさんを気遣う。

 これは、アップルによるマイクロソフトへのネガティブキャンペーンだ。

 このキャンペーンも、パソコンのウイルスやクラッシュ、スローダウンという、きわめて「わたくしごと」を痛烈に訴えてくる。そして、テレビCMの中では客観的な事実は提示されないものの、パソコンユーザーの実体験に訴求することで、その効果を得ている。また、CMそのものはアップルによるものが明確で、代理人は用いられていないが、ウィンドウズやマイクロソフトと名指しするのではなく、「パソコン」と呼ぶことで、当事者がネガティブキャンペーンをすることの負の側面を緩和していると見ることができる。

 代理人を用いたより狡猾なネガティブキャンペーンはあるのかもしれないが、これ以降、当事者によるネガティブキャンペーンの目立った例は見受けられない。それは、日本では直接的なネガティブキャンペーンの反応があまりよくないからとも考えられる。

 他方、米国の場合、企業同士のあからさまなネガティブキャンペーンは日本よりも活発だ。マイクロソフトはSurface Pro 3とMacBook Airを比較して、MacBook Airが劣っていることを指摘するCMを流している。またマクドナルドは、スペシャリティコーヒー市場に参入する際に、スターバックスを挑発して「4ドルなんて馬鹿げている。エスプレッソをどうぞ」という看板を出した。

 こうしたCMでは代理人を使わず、さらに、相手も名指ししている。米国ではもはや、当事者に都合のよい事実ばかりが切り取られている可能性があったとしても、ある程度の事実がそろっていれば、ネガティブキャンペーンが受け入れられる社会的な素地があるのかもしれない。そして、それは米国では効果的なのだろうか。さまざまな批判はありつつも、こうした企業行動は、多々、実例がある。

 次回は、敵のメッセージが浸透しそうになった際に、いかにそのメッセージをかき消すのか、その緊急手段について紹介したい。

 次回更新は、9月11日(金)を予定。