権威で人を動かす組織にはしたくない

オフィスを拝見して、岩田さんはアイデアが生まれてくる組織を意識してつくられているように感じました。社内環境づくりではどのようなことに配慮されていますか。

 おっしゃる通りで、オフィスはすごく考えてつくっています。会社のオフィスとは、そこでどのようなマインドセットができるかの舞台装置だと考えているからです。

 たとえば、巨大な組織を動かすオフィスでは、役員フロアのフカフカの絨毯や、どでかい机が舞台装置となります。あらゆるものを動かす権威として、そうした装置が必要だからです。外資企業では個室がステータスとなっていますが、これも装置の1つですね。

 その点、我々はきちんとしたコンセプトを持っています。アスクルの社員だけでは何もできないので、お客様やメーカーなどのお取引様もちろん、パートの方も含めた力が必要です。私はそれを「大アスクル」と呼んでいます。そして、大アスクルはみな平等であることを原則としています。

「私はもともと、組織にヒエラルキーをつくらないようにしてきました。権威で組織を動かすのではなく、リーダーシップを発揮してビジョンで動かしなさいということです」

 そのため、私の席も社員と同じ大きさで、彼らと同じ木の椅子に座っています。役職についても肘付きのイスになるなんてことは一切ありませんし、昔から私はオフィスの真ん中に席を置いています。社長室を持ったことはないんですよ。パーテ−ションもありませんからすべてがオープンで、私がいま何をしているか、社員がいま何をしているかが全部わかるようになっているのです。

 レイアウトでは細部にも気を配っていて、机の幅も通常より短くしてあり、後ろに座っている人の背中との距離もあえて狭くしてあります。当社がまだベンチャー企業だった時代に、スタッフのテンションが最も上がった密度にしているのです。チームのみんながその場で立ち上がれば、すぐに会議ができる状態にしています。

 私はこれを「ラグビー型経営」と呼んでいます。何か起こったらラグビーのモールのように人だかりができる。当然、周囲にも緊張感が伝わります。それを見ている人は、いつでもそのモールに突っ込んでいけるように準備をするわけです。そのためには、ボールがどこに転がっているか、いま何が起こっているかを全員がわかっていなければなりません。本来の役割があったとしても、すべてを捨ててタックルにいったり、モールに突っ込まなければいけない事態も起こるからです。

 たとえば、ごくたまに物流センターがうまく動かなくなることがありますが、そのときは本社の社員が100人、200人規模で物流センターに徹夜で入ります。それはお客様への「明日来る」約束を守るためであり、そうした意識を社員全員が持っているからです。緊急時には、役職も性別も隔てなくみな嬉々として現場に入って、そのときは相当テンションが上がっていますよ。

 私はもともと、組織にヒエラルキーをつくらないようにしてきました。権威で組織を動かすのではなく、リーダーシップを発揮してビジョンで動かしなさいということです。アスクルの管理職は結構大変だと思います(笑)。

管理職に説得力を持つリーダーシップがなければ、部下はついてこないということですね。そうした考え方は何から学ばれたのですか。

 私の頭の中には、車に例えると2つの車輪があります。

 1つの車輪はビジネスモデルです。ライオン時代、ライバルである花王の丸田芳郎さんが販社をつくりました。1対1の人の力では花王さんに絶対に負けないと思っていたのに、それ以降、まったく勝てなくなった。丸田さんは、同時に物流の効率化を行い、浮いたお金を広告宣伝費に回しました。要はビジネスモデルで「勝てる構造」をつくったわけです。経営者の仕事の1つは、きちんとしたビジネスモデル、勝てる構造をつくることだと思っています。

 もう片輪は、会社モデルです。アスクルでは社内に怒鳴り声が響くようなことは一切ありません。昔から意識してそうした雰囲気をつくってきました。上司がガンガン叱責する会社は、たしかに短期では伸びるかもしれませんが、そんなことはやりたくない。みんなが幸せな気持ちでいて、自由にワイワイやって勝てる会社になりたいと思っています。

今年の「ワールド・マーケティイング・サミット」では、デジタル部門に登場されます。「デジタルマーケティングへの挑戦」がテーマに掲げられていますが、どのようなお話をされる予定でしょうか。

 最終的には「Consumer is King」ということですね。前回お話した通り、ビッグデータを含めたデジタル・マーケティングによって、いろいろなことがわかりますが、そこに依存しているだけではゴールにたどりつけません。ワールド・マーケティイング・サミットでも、そうしたお話ができるのではないかと思います。

 

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会場:グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール3F「北辰」(東京都港区高輪3-13-1)
登壇:フィリップ・コトラー(ノースウェスタン大学 ケロッグ経営大学院 教授)、ドン・シュルツ(ノースウェスタン大学IMC名誉教授)、高岡浩三(ネスレ日本代表取締役社長兼CEO)、吉田忠裕(YKK代表取締役会長)、岩田彰一郎(アスクル代表取締役社長兼CEO)、宮坂学(ヤフー代表取締役社長)ほか。
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