左脳だけでやっていくと価格競争に終始しがちですが、右脳であれば異なる付加価値も提案でき、価値競争に移行できそうです。

 そうしなければ、ECはもっとも安い店を選んで買うためのデフレマシンとなり、メーカーも付加価値が出せず、社会全体も本当にハッピーになるとは思えません。ECには、デフレマシンとしての機能を求められているわけではないと思います。生活者により高い価値を提供するECになるにはどうすればよいか。それをメーカーのみなさんと一緒に研究しているのが、ECマーケティングラボなのです。

左脳と右脳の真ん中を探り続ける

「内なる自分」とデータのファクトが違った場合、どう判断すべきでしょうか。

 インターネット・マーケティングの手法の一つに「A/Bテスト」がありますよね。たとえば、2つのページを用意して、微妙に異なるAのコピーとBのコピーで、どちらが受け入れられるかを見るようなテストです。A/Bテストを行えば、どんなコピーの表現がいいのか、価格はどのくらいの大きさで書いたほうがいいのか、写真はどう扱えばいいのかなど、それなりの結果は出ます。

「データに基づく個々の結果を合わせても、全体の価値を必ずしも最大化するものが生まれないことが、インターネット・マーケティングの難しさでしょう」

 ただ、A/Bテストを繰り返すことで“正しい姿”になるかと言うと、絶対にそうはなりません。その結果だけでサービスをつくっても、いびつなものになってしまいます。データに基づく個々の結果を合わせても、全体の価値を必ずしも最大化するものが生まれないことが、インターネット・マーケティングの難しさでしょう。

 そこには、持続性ある企業としての意思が必要になります。A/Bテストだけで物事を判断していると、それこそデフレマシンの世界に戻ってしまうことになる。本当に生活者が満足する場所、つまりメーカーにとっても生活者にとっても、また我々にとっても、Win-Winとなる場所はA/Bテスト至上主義からは見つけられないのです。

 客観的なデータは非常に重要ですし、いろいろな材料を与えてくれますが、それだけを信じていると、長期的には間違った方向に進んでしまうと思います。

データを優先すべき点とそうでない点は、どのように分別されているのですか。

 正直に申し上げれば、そこはいま悩んでいるところです。将来はこうしたものに価値が出るだろうと思っても、いまA/Bテストをしたら違う結果となることもあるでしょう。たとえば、ある商品を売るとき、写真だけのページと、テキストがたくさんあるページでA/Bテストすると、いまの日本ではテキストのあるほうが売れる可能性もあります。

 ただ、スマホを見て直感で買う時代がこれから進めば、おそらく異なる結果が出るでしょう。もちろんデータの裏付けも必要ですが、先を見据えて新しい価値観、新しい場所をつくり出すには、A/Bテストだけでは捉えられない世界を持つことが大切だと思っています。

 セールをすれば売れていくので、どうしてもそちらに引っ張られるのですが、我々がネット上の量販店になればいいかというと、必ずしもそうではありません。安くしてたくさん売ることは、大きくなるための近道ではあります。しかし、値引きだけで大きくなると、いずれは崩れ落ちてしまう。そこに企業としての持続性はありませんよね。

 右脳と左脳の真ん中を見極め、長くお客様に愛される場をどうつくるか。答えは見つかっていませんが、我々はそれを考え続けなければならないのです。

 次回更新は、9月4日(金)を予定。

 

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