「Consumer is King」が擦り込まれている

アスクルサービスを始めた当初から自社製品以外も扱うなど、自前主義に陥らないのは御社の特徴だと感じます。そう判断されるようになったきっかけを教えてください。

 プラス設立時の目的は、ダイレクトマーケティングによってプラスの商品をもっと売ることでした。ところが、お客様の反応を間近で見ていると、どうもそれは違うということに気づいたのです。私を含めて4人のスタッフでスタートしたので、お客様との電話もすべて自分たちが対応する環境でした。そのため、彼らの反応を直接知ることができたのです。

「売りたいものを売るのではなく、お客様が求めるものを売らなくてはいけないと痛感しました」

 たとえば、これまで他社の製品を使っていたお客様に、「当社の製品のほうがこんなにいいですよ」と説明すると、その場では「わかりました」と言ってもらえますが、販売データを見ると購入されていなかった。このとき、売りたいものを売るのではなく、お客様が求めるものを売らなくてはいけないと痛感しました。そこからは発想を変えて、とにかくお客様の要望を実現することを最優先に考えるようにしたのです。

 本来、純粋に流通という立場に立てば、お客様が求めるものを提供しなければ事業は成り立ちません。私は現場でそれを学んでいたので、意思を貫きました。希望小売価格ではなく、お客様が求める価格、納得できる価格で商品を提供すると決めたときも同じで、最終的には当時の経営トップの英断にも支えられ、それがアスクルの持続的成長につながったと思っています。

 創生期にそうした体験をしたため、97年に分社独立したとき、「お客様のために進化する」を企業理念としました。お客様を中心に考えてお客様の満足を追求することと、絶えず進化することでお客様にとってベストな場を提供したいという想いを言葉にしたものです。その姿勢を貫いたことよって、そこからの急成長を果たせたと思っています。

顧客満足を徹底するという岩田さんの考えの原点は、どこにあるのでしょうか。

 大学3年生になってゼミで初めてマーケティングの教科書を開いたとき、最初に目に飛び込んできたのが「Consumer is King」という言葉でした。40年経ったいまも、それが頭に擦り込まれています。

 大学を卒業してライオンに入社してからは営業や商品開発を担当しましたが、そのときも生活者であるお客様を中心に置いてモノをつくろうと考えてました。そうして企画したのが、「フリー&フリー」というヘアメイク用商品です。当時のライオンの主力商品はエメロンシャンプーで、洗浄剤としてのシャンプーでした。しかし、生活者は髪を美しくすることを望んでおり、清潔にするだけでは物足りないと思っていたのです。

 清潔にするシャンプーから、ステキなスタイリングをするために、髪の状況をベストにすることにニーズが動いていた。これまでにないコンセプトの商品でしたから、このときも社内を随分駆けずり回ったものです。

 当時は、マス、つまり大衆に受け入れられるものが一番だと考えられていました。ただし、そこで言うマスとは、毒蝮三太夫さんが北千住の駅前で「おばちゃん、今日のおかずはなに?」と聞くような人たちだったのですね。それこそが地に足のついた大衆と考えられていたのです。

 しかし、すでに時代は変わっていて、実際のマスは高級なシャンプーを使い、毎月美容室に通い髪を大切にする若い女性に移っていたのです。「オールドマス」という従来の大衆とは異なる「ニューマス」という世界があり、消費者は後者にどんどんと動いていました。そうした時代にあってはニューマス、私たちは「ネオマス」と呼んでいましたが、ネオマスの世界に照準を当てたビジネスをすることによって、メーカーも時代の変化に合わせて動いていけるのです。

 次回更新は、9月2日(水)を予定。

 

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