●グーグル

 賢明なグーグルは、上記2つのブランドがたどった歴史に学ぶことができる。今日までの同社は、「ブランデッド・ハウス(branded house)」戦略と「ハウス・オブ・ブランズ(house of brands)」戦略の両方を採用してきた。前者(マスターブランド戦略と同義)は、多岐にわたる製品をグーグルという企業ブランドの名の下に提供することだ。グーグル・グラスやグーグル・プレイなどがその例である。後者(個別ブランド戦略と同義)は、複数の異なるブランドをグーグルの名を冠せずにポートフォリオ管理する。ネスト(サーモスタット)、カリコ(生命科学)、ファイバー(光回線)などがある。こうした二面戦略は珍しいことではないが、それをうまくやるにはブランド戦略のあらゆる要素を適切に設計・適用する必要がある。

 他のあらゆるブランドと同様に、グーグルブランドが強みを発揮できる範囲には限界があり、特定の分野においてより多くの意義と価値を持つ。このことをグーグルは間違いなく理解しているはずだ。スターバックスの核(ブランド・プロミス)が「豊かで実りあるコーヒー体験」ならば、グーグルブランドの核は「適切で入手可能な情報」だ。同社が掲げる使命、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使いやすくすること」を見ればそう解釈できる。このブランド・プロミスは、同社の検索機能、そしてマップやブック検索などの派生機能に体現されていた。

 しかし、グーグルがそこから離れた分野――自動運転や医療など――へと進出していくにつれ、前述のブランド・プロミスおよび使命との関連性はほとんど失われていった。あまりに多くの異なる分野へとまたがり、ブランドの意義がぼやけ、同社の目的について顧客と金融アナリストの両方を混乱させていたのだ。

 アルファベットの設立によって、グーグルはこれまでの二面戦略を体系化し明確化した。そうすることで、両方の最適要素が得られるようになる。つまり、グーグルブランドへの高度の集中、そしてアルファベットブランド傘下での幅広い事業のポートフォリオ管理だ。アルファベットの存在によって、グーグルブランドは自社のブランド・プロミスおよび使命にいっそう集中できる。それは事業パートナーにとってメリットになり、収益性が向上し、金融アナリストから高評価を受けることになる。

 分社化で生まれたアルファベットのほうは、別々の多様なブランドを擁する傘ブランドになる。ポートフォリオを構成する個々のブランドの背後にいながら、必要であれば直接・間接にエンドーサー・ブランド(あるブランドの約束を保証する存在)の役割も果たせる。

 ブランドは本来、魅力的なブランド・プロミスを果たす能力によって生き残り繁栄する。望まれる便益を、他のブランドや企業には成しえない卓越した方法で提供できるかどうかである。グーグルはブランド構築の戦略を、自社のブランド・プロミスおよび製品開発戦略と整合させることで、顧客市場と金融市場に明確性を示したのだ。


HBR.ORG原文:The Branding Logic Behind Google’s Creation of Alphabet August 14, 2015

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ケビン・レーン・ケラー(Kevin Lane Keller)
ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのE・B・オズボーン記念マーケティング講座教授。著書にはベストセラーStrategic Brand Management(邦訳『戦略的ブランド・マネジメント』東急エージェンシー)などがある。