●ヴァージン

 ヴァージンはこれとはまったく違う方針を取り、企業ブランドを多岐にわたる業界へと直接的に拡張してきた。同社の事業は7つの分野に分かれている。エンタテインメント、健康、レジャー、金融、人と地球(環境)、通信・技術、旅行だ。その全事業における同社のブランド・プロミスは「顧客のチャンピオン(擁護者)になる」こと――顧客のニーズが十分に満たされていない分野へと進出し、より深く満足させるために、他社と違うことを違う方法でやる、というものだ。

 ブランド・プロミスがこのように抽象的であれば、非常にさまざまな分野と関連しうる。しかしその約束を実際に果たすのが極めて難しいことは、ヴァージンが多くの製品・サービスの市場で経験してきた困難や失敗を見ればわかる。顧客は明らかに、ヴァージン製のコーラやウォッカ、結婚式用の服(同社が進出し撤退した数々の製品・サービスの一部だ)がなくても十分に満足していた。「ヒットか空振りか」の路線をこのまま歩み続けることは、ヴァージンにとって危険である。今のうちは若くてヒップでクールなブランドでも、その約束をたびたび果たせないようでは顧客に疑いを持たれ、時とともに顧客との絆が弱まってしまう。

 ブランド・エクイティを銀行口座に見立てて考えてみよう。ブランドが「良いこと」をした場合(革新的な新製品の発売など)、「ブランド口座」には預金が振り込まれる。しかし「悪いこと」をすれば(新製品が顧客を満足させない、刺激を与えない、失敗作になってしまったなど)、口座から預金が引き出される。ヴァージンは長年の間にいくつかの新事業で成功し恩恵を得てきた。ヴァージン・メガストアーズ、ヴァージン・アトランティック航空、ヴァージン・モバイルなどの成功によって、ブランド口座の預金は膨れ上がった。

 ただし同社が慎重さを欠けば、ブランド・プロミスは損なわれ口座は目減りする恐れがある。2014年にヴァージン・ギャラクティックの宇宙船がテスト飛行中に墜落した悲惨な事故は、ブランドの多角化路線に伴うリスクとブランド毀損の可能性を浮き彫りにするものだ。

 スターバックスとは対照的に、ヴァージンのブランド戦略は綱渡りのようなものであり、高度のマネジメントとマーケティングの能力、そして創造性が必要とされるのだ。