多様性ある集団が個性を打ち出せるか

 こと事業の特徴に関していえば、いまは独自性なしには生きられない時代です。その企業ならではの強み、その企業こそが実現できるサービスや製品が競争力であり、それらがない「何でもあり」企業は規模か立地(アクセス性)で勝負するしかありません。

 大胆な仮説を言えば、多様性が機能するには、メタレベルでの同質性が必要なのではないか。同じ価値観、同じ目標、同じ世界観などです。

 私の会社のある原宿は、最先端ファッションの街だけあって、歩いている人の服装が奇抜です。それは隣の街、渋谷を歩いている人と比較するとわかりやすく、原宿にいる人は流行りのデザインを取り入れている人は少ない印象です。「斬新なファッション」という世界観を共有する人が集まったことから生まれる多様性がここにはあります。「奇抜」という軸で斬ると同質になりますが、「ファッションの種類」は多様です。

 新橋はどうでしょうか。典型的なサラリーマンの街と言われ、ひょっとしたら企業が求める多様性の対極にあるような街かもしれません。しかし、「業種や職種を問わず一定のサラリーを持ち生活スタイルが同じ人たちが、同僚と庶民的な価格で楽しめるお店」がこれほど多様に揃っている街は他にありません。

 多様性を生み出す前提に、何らかの共通性があることが欠かせない。こう考えると、企業が多様性を推進するためには、自社の軸となるミッションやビジョンなどを明確に掲げる必要があります。それに共感したという同質な人が集まる。その上での多様性ではないでしょうか。

 最後に新宿のようなメガシティを考えてみましょう。学生からサラリーマン、女性や外国人などあらゆる層を呑み込む包容力があり、そこに居心地のよさがあります。こんな包容力のある空間を企業内の組織としてつくることができれば、魅力的なのではないでしょうか。そこには、新宿で警察沙汰の事件が多いように、さまざまな問題も内蔵するでしょう。それに対処するコストも覚悟しなければいけません。それでも街に集まる人が絶えず増えゆくのは、多くの人が感じている魅力があるからに違いありません。ここに集う人が共通して感じる魅力とは何か。それは言語化しにくいメタレベルのものだからこそ、強みになっているのかもしれません。(編集長・岩佐文夫)