現地スモールビジネスを育て
チャネルを創る

 南アフリカで創業し世界2位のビールメーカーとなったSABミラーも、同じように新興国が抱える社会課題に対し、自らがその解決に貢献し環境を変え、事業基盤を整えている。

 同社は、グローバルブランドよりもローカルブランドの集積で勝負し、首位のABインベブが弱い市場で勝ちを収める点に特徴を持つ。実際に、200以上のブランドを持つが、ほとんどが1カ国もしくは1地域の枠を超えない。必ずしも市場の大きい国にこだわらず、新興国中心に、自らが競争優位を築きやすい国に選択的に展開している。そして各国の環境に密着して、その中で勝てる商品と販売手法を確立していくことが同社の勝ちパターンの1つである。

 商品の面では、ローカル嗜好に合わせた多様な素材やフレーバーのイノベーションを得意とする。たとえば、サブサハラではカッサバを素材としたビール、北米ではフルーツフレーバービールを展開するほか、アフリカ南東部(モザンビーク、ジンバブエ、ザンビア)ではローカルで作られる濁りビールを商品化し展開している。

 一方で、いくら商品を工夫しても、サプライチェーン全体が発展していかなければ、成長は頭打ちになる。そして新興国の場合は特に、流通が近代化されず、零細で未成熟なままであることが、経済やコミュニティ発展の妨げとなる社会課題であることが多い。SABミラーの特筆すべき点は、そのようなボトルネックをただ受け入れるのでなく、自ら流通の課題を解決し、販路育成につながる仕組みを構築していく能力にある。

 たとえば、SABミラーの源流がある南アフリカでの取り組みは著名である。南アフリカでは、同社の売上の過半が、国内に約20万店あるといわれるタウンシップ(都市郊外の貧困地域)内の零細な飲み屋で生まれる。ここでは750ccの大瓶を1本百数十円で売り、多くの消費者は1人1本を買って飲むのが贅沢である、というレベルの所得層である。

 こうした零細事業主の経営安定と良好な関係こそが事業の屋台骨となるため、同社は少額株主制度を活用してきた。これは、そうした零細オーナーに対して、千数百円程度の少額に分割した自社の株の取得を促し、株主になってもらう制度である。

 株主になればSABミラーの業績に応じて配当を受け取り、零細事業主も自分の事業を拡大することができる。またそのためにSABミラーの商品を販売するインセンティブが大きく高まる。自国の流通事情に合わせ、零細小売支援とロイヤリティの高いチャネル育成を両立させているのである。