FEMSAは収益性を高める付帯事業にも抜かりなく投資している。「Bitz」ブランドでプライベートブランド食品事業を展開し、来店客を狙った中食事業と外食事業も当初の外部委託をやめ内部に取り込んでいった。そして2014年からは、規制緩和とアライアンスの好機を捉え、小売とシナジーが大きい消費者ファイナンスとガソリンスタンドへ参入を開始した。

 消費者ファイナンスでは、バナメックス、Visaとの提携を活かし、2014年に「Saldazo」ブランドでクレジット・デビットカードの提供を始めた。同カードは「OXXO」のロイヤリティプログラムと連動しており、早期に200万枚の発行を目指す。

 ガソリンスタンドについては、メキシコで2015年から異業種参入を認める規制緩和が実現した。これを見越して、同社はペメックス(Petroles Mexicanos)が独占してきた同市場に参入を決め、一気にスタンド200カ所以上を買収した。2015年末までに、これまで運営委託してきた店舗併設スタンドも、自ら保有し運営開始すると発表している。

 また逆の意味で象徴的なのが、同社のビール事業である。というのも、同社はもともと1890年に創業したビール会社であり、ビール事業こそが祖業だった。しかし、2010年には同事業をハイネケンに売却し、ビール事業運営から撤退している。そこには、少数のグローバルメガ企業に集約が進む中で、中堅の自社が事業を続ける価値は低いとする、現実を見た冷静な判断がある。

 一方で同社は、ハイネケンの2020年までのメキシコ独占流通供給者の地位を得て、ハイネケン株式の20%を取得した。その主眼は、単に撤退するだけでなく、残る事業に有利な条件を整え、また自社より得意な企業に事業を託し、投資資産としてリターンを得ることにある。そこでは、あくまで現実志向でリターンを最大化する姿勢が貫かれている。

 このように、FEMSAは消費や流通の動向、規制、競争環境を常にウォッチし、それに合わせて大胆な投資を行う。結果として、新興国で経済発展と共に広がる消費を効果的に吸収する、狙い打った多角化事業が成功を収めている。

社会課題解決を通じた
望ましい事業環境の創造

 FEMSAの成長モデルの第2の特徴は、単に環境を受身で観察するだけでなく、環境に自ら働きかける戦略を持つことである。具体的には、新興国で深刻な社会課題の解決に働きかけることで、自らの事業につながる市場形成を促進する。

 たとえば、水問題への取り組みがその代表例である。ラテンアメリカは、水資源は豊富だが地域格差があり、また清浄な水へのアクセスと水資源保護には課題もあり、水への社会的関心が高い。

 そこで同社は2008年に財団(Fundacion FEMSA)を組成し、政府・大学・NGO・異業種の他企業と連携して、水の課題解決に資金と人材を供給する基盤を構築した。