多様性を尊重してもまとまるのは、ビジョンという軸があるから

篠田:悪い意味で「慮る文化」が出ることはありませんか。今、私はAという働き方をしたいと思っているけれど、上司はBを望んでいるだろうからBにしようと。

青野:それが問題になることもあります。その原因は、多様性というテーマに対するマネジャーの理解が浅いことです。結果を出すために、彼にはこういう働き方をしてもらいたい。若いんだから、もっと長時間働いてほしい。マネジャーの一方的な期待からコンフリクトが起こることはあります。マネジャーには、もっと多様性への理解を深めてほしいので、マネジメント研修などのときにテーマとして挙げています。

篠田:上司の期待より、自分の望むスタイルのほうが重要ということですか。

青野:そうですね。

篠田:一般的な組織運営と比較すると、『アライアンス』の提唱する雇用を実践するとき、個々の社員だけでなくマネジャーの役割の重さ、負担の大きさは絶大です。サイボウズさんはマネジャーに期待することや実現の難しさについてどうご覧になっていますか。

青野:正直、難しいですね。僕は何度もマネジャーを外しています。このままだと、多様性が実現できそうもないと判断したからです。もちろん、その前に手を変え品を変え、多様性の重要性について伝えます。それでも、マネジメントスタイルを変えられないマネジャーには降りてもらいます。その観点から見れば時間がかかりそうですね。

篠田:多様性はものすごく知性を要求されると思うんです。人間の本能的な直感は、知らないものは怖いから排除したくなるものです。ここを乗り越えるには、知性をもとにした蛮勇ではない勇気をもって多様性を受け入れることだと思います。ただ、多様性を尊重するとバラバラになる可能性はありますよね。でも、サイボウズさんのまとまりを見ていると、一体感を出すための工夫がしのばれます。

青野:それは「チームワークあふれる社会を作る」という唯一無二のビジョンですね。それに共感できなければ、この会社を出て行ってくださいと普通に言います。今、ここに集まっている生態系は、そのビジョンを実現するための生態系なので、それに興味がなくなったら去ったほうがお互いにハッピーです。実際、ビジョンを徹底していなかった従業員100人のサイボウズより、従業員500人の現在のサイボウズのほうがはるかに一体感があるんです。チームワークが大好きという人しか残っていないからです。おそらく、僕が抜けたとしても、その軸はあまりぶれないと思いますよ。

 

 

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