会社の存続は、次世代の会社と社員の「アライアンス」に任せる

篠田:関連したことで言うと、「アライアンス」の相手が会社だというだけでは、どうしても抽象的に過ぎるように思えてしまうんです。会社へのコミットだけではなく、青野さんと働きたい、エンジニアの誰々さんと仕事をしたいなど、「バイ・ネーム」で互いにコミットすることが不可欠ではないかと思うのですが。

青野:おっしゃる通り。会社と社員の関係と言いますが、会社という「モノ」や「ヒト」はありません。会社とボンヤリと言った瞬間に、本当の人間関係が見えなくなってしまいます。

篠田:お互いに思考停止に陥る罠ですよね。何かを人のせいにするのは心理的に抵抗がある大人でも、何か都合の悪いことがあると容易に会社のせいにしてしまう。そもそも、実体の感じられない「会社さん」というものに、ひとは本気でコミットできないのではないでしょうか。ひとにコミットし、その相手が会社の姿勢を体現していると信じられるなら、その会社にもコミットできる。

青野:サイボウズは青野という社長がいて、この人物に共感し、この人物が考えるビジョンの実現に力を貸す。基本的にはこれだけです。だから、僕が死んだらサイボウズは解散してもいいのではないかと考えています。会社は存続が命題と言われますが、最もやりたがった人物がいなくなったとき、無理に維持する必要があるのでしょうか。

篠田:個人的な見解ですが、世代を超えた会社の継続という概念が一般化したのは、20世紀に入ってからのことだと認識しています。大型資本を投入した工場は人より長持ちし、しかも莫大な投資を注いでいるため、経営陣が変わっても工場が収益を生み続けるようにしなければならない。そこから、人の寿命を超えた会社をつくるというテーマが生まれました。

 でも、そこから100年以上経過した現代は、その前提を持たない会社が世の中を牽引しています。そんな現代でも、世代を超えた継続に価値をおくアプローチは成立し得る。それはお客さんです。お客さんは青野さんに心酔してサービスを買っているわけではなく、サイボウズさんのサービスが欲しい。誤解を恐れずに言えば、経営陣が変わろうとお亡くなりになろうと、お客さんはサービスを続けてくれと言うはずです。それなのに、社長が辞めるから事業もやめるということでいいのかという課題はありますね。

青野:わかります。でも、それを決めるのも僕ではないと思っているんです。次の世代の人が話し合って、残すもよし、解散するもよし、託すことが大事だと思っています。唯一の願いは、続けることを前提にしないでくれということですね。最近NPOの人と接することが増えています。彼らにNPOの完成形を尋ねると、解散だと言うんです。社会の問題がなくなったのだから、組織としては存在しなくていいということですね。組織の目的は存続ではなく社会問題の解決である。NPOに限らず、現代の会社もそう考えるべき時代になったと思っているのです。

※次回は8月21日(金)公開予定。

 

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