会社と社員の信頼関係のベースには、ビジョンがある

篠田:その根っこには、青野さんのサイボウズ社員に対する積極的な信頼があるという印象を持ちました。信頼関係がなければ、アウトサイダーのチームを起点にしたクーデターが心配になります。

青野:僕はすべての人を同じように信頼しているわけではありません。信頼できなくて辞職を勧めた社員もいます。最終的にその基準になるのは、僕たちが掲げる「チームワーク溢れる社会を創る」というビジョンです。このビジョンに共感している人は、クーデターを起こさないはずだという信頼があるんです。

篠田:信頼という言葉を使うのは簡単ですが、日々の関係性の中で実現していくのは簡単なことではありません。信頼できる状況を作るために意識されていることはありますか。

青野:ビジョンを語り続けることです。2005年に社長になって、当初はいろいろな事業に手を出しました。1年半で9社も買収したのです。売り上げ29億の会社が、1年半で120億まで増やしたのです。でも、買収した事業に自分の魂を燃やすことができず、放置したままになってしまいました。その事業に携わる社員も可哀想だし、僕自身もワクワクしないので8社は売却しました。そのとき、僕はグループウエア事業1本でいくと決めたのです。僕が継続的に魂を燃やすことができるのはグループウエア事業で、チームワークを広げる事業である。それからは、そのことを言い続けるのが僕の仕事になりました。僕はシステムを作ることはできませんし、売ることもできません。でも、ビジョンを語って共感してもらえれば、僕のマイナスの部分は社員が埋めてくれるのです。

篠田:ビジョンでモチベーションが上がる人はサイボウズで働けばいいし、自分の関心が変わったら卒業すればいいということですね。

青野:そうです。ただ、最近はサイボウズを辞めてもサイボウズの周辺でビジネスを立ち上げるケースが増えています。サイボウズのソフトを使って新しいサービスを提供し、サイボウズが作らない周辺ソフトを作っています。

篠田:サイボウズを中心とした生態系のようですね。

青野:本社を日本橋に移したのは、そのためです。ここであれば卒業生も顧客もパートナーも頻繁に出入りができるので、新しい生態系を作ることに役立つと思ったのです。

篠田:実は、『ALLIANCE アライアンス』では会社と社員という枠組みで書かれているのですが、社員じゃなければダメなのか、については書いてありません。アライアンスを考えるとき、雇用関係だけで明確に線を引けない、オーバーラップする部分があるのかもしれませんね。