「Who」を「Where」に翻訳する

 キャンペーン戦略のフレームワークにおける最初の問いは、ターゲットは誰かということである。間違ったターゲットに対して訴求力の高いメッセージを訴えたところで、そのメッセージが有権者を動かすことはない。

 メッセージをターゲットの有権者にきちんと届けるためにさらに重要なのが、「ターゲットが誰か」(Who)という問いの答えを、「そのターゲットはどこにいるのか」(Where)という問いの答えまで翻訳することである。

 ビジネスのブランディングでも、コンセプトをアクションに落としてくために、この作業は非常に重要である。

 たとえば、トクホ(特定保健用食品)ビールというノンアルコールビールの新たな製品カテゴリを考えてみる。すでにトクホ表示の許可を得ているサッポロビールの「SAPPORO+」という商品ブランドは、メタボリックシンドローム(メタボ)やその予備軍の中年男性をターゲットとしていると言われている。ただ、たとえそれが実際のターゲットであり、訴えるメッセージが確定しても、これだけではどこでプロモーションしたらよいのかがわからない。

 そもそも、ノンアルコールビールを飲む人の割合はそれほど高くない。そのため、やみくもにマス広告を打ったところで、そこにターゲット層がいる可能性は低い。店頭で試飲キャンペーンをするにしても、どこにどうやって資源配分をしてよいか不明瞭だ。

 限られた資源を効率的に結果に結びつけるためには、みずからの資源の配分をコントロールできる切り口で、どこにターゲットが多くいるのかを理解する必要がある。この場合は、ノンアルコールビールが消費される場所、すなわち、メタボやその予備軍の男性が多くいる場所がどこなのかを知ることが求められるのである。

 その切り口は、幹線道路沿いのファミレスなのか、駅前の居酒屋なのかという飲食店の「業態」に見出せるかもしれない。都心の一等地なのか地方都市なのか農村部なのかという「地域」であるかもしれない。ローソンなのかナチュラルローソンなのかローソンストア100なのかという「小売店ブランド」であるかもしれない。あるいは、平日の昼間なのか、平日の夜なのか、休日なのかという「テレビを見る時間帯」かもしれない。

 このように何がもっとも重要な切り口なのかは分析しなければ、資源配分もできないのである。

 ボリスの選挙対策本部でも、概念的にターゲットを定義したうえで、そのターゲットとなる有権者という「誰」(Who)を「どこ」(Where)に翻訳した。その答えが、冒頭で描写した2つの状況における、場所とビラの違いであった。

 では、いかにこのような答えに至ったのか。

 順を追って分析するために、まずは市場概況としての過去の選挙結果、ゲームのルールである選挙制度を振り返る。そのうえで、有権者のセグメンテーションに基づき、2つのターゲットグループを定義する。そして、そのターゲットグループがいかにWhoからWhereへと翻訳されるのかを解説して、最後に議論をまとめる。