コリス教授の批判

 オーディナリー・ケイパビリティとダイナミック・ケイパビリティをより低次の対象レベルの能力とより高次のメタ・レベルの能力に区別できたとしよう。それでも、別の問題が発生するというのがコリス教授の主張である。

 彼によると、企業のケイパビリティは、以下の3つの形で劣化するという。

<1> 企業が環境に適応するたびにケイパビリティを使用すると、それは劣化する。
<2> 異なる形で消費者に価値を提供する同業他社が持つより優れた代替的ケイパビリティが出現すると、自社のケイパビリティは劣化する。つまり、水平的に代替されることによって劣化する。
<3> 既存のケイパビリティがより高次のダイナミック・ケイパビリティによって代替されるとき、既存のケイパビリティは劣化する。つまり、垂直的に代替されることによって劣化する。

 コリス教授は、<3>のより高次のケイパビリティが最強であるという。しかし、企業がケイパビリティの劣化を避けて、持続的競争優位を生み出すために、究極的な能力としてより高次のダイナミック・ケイパビリティを求めていくと、企業は無限後退に導かれることになる。つまり、企業はメタ・ケイパビリティよりも、より高次のメタメタ・ケイパビリティ、さらにメタメタメタ・ケパビリティ……を求めていき、無限後退するだけで、究極の能力を得ることはできないという。

 以上のように、今日、ダイナミック・ケイパビリティをめぐってこれら二つの問題が存在している。これらの問題は、いまだ解決されることなく、ダイナミック・ケイパビリティ論を覆う2つの雲のように存在しているのである。

 以上のように、ダイナミック・ケイパビリティ論をめぐっていまだ深刻な学問的問題が内在しているものの、現場レベルではこのダイナミック・ケイパビリティ論からいまだ日本企業は学ぶべき点が多くあるように思える。それについて簡単に説明してみたい。