ジョリビーのような企業の海外戦略には、「強みを変化させるMarket seeking」という行動原理が見られる。彼らは先に述べたインドフードなどと同じく、強みが通用する市場を求めて海外に展開する。ただし、勝ちパターン自体が成長とともにより抽象化され拡張性を持つ。

 このタイプで可変性が高い企業は、同じ事業を続けていても展開手法が高度化し、今ある強みを昇華させ進出先市場にふさわしい新しい勝ちパターンを創ることができる。そこには、既存の強みに安住することなく、強みの意味や拡張性を再定義し続ける能力が根付いている。

 日本の外食企業には、「日本の味をそのままに海外に届けたい」という思いが強い企業が多い。そのような企業は、母国のフォーマットと味が通用する市場を慎重に選び、忠実に再現する形でほんの少しずつ出店する。しかし、ジョリビーはそのステージを卒業し、自社の経営ノウハウの本質を結晶化して、ローカルの味と自社のノウハウで新しい市場を共に創り上げ、成長を加速する段階に入っているのである。

投資で事業領域を広げる
カメレオン型の展開

 単なるMarket seekingを超えた行動には、もう1つの切り口がある。それが、「可変性」の第3のパターンでもある、機会に応じて投資し事業領域そのものを大きく広げ変えていく、カメレオン型の投資行動である。たとえば、食用油などを展開するサウジアラビアのサボラ・アルアジジア・ユナイテッド(以下サボラ)がそれにあたる。

 サボラはサウジアラビアの港湾都市ジェッダを本拠とする、中東最大規模の民間企業である。同社は1979年に食用油メーカーとして設立されたが、現在の事業は幅広い。食品事業では食用油で本国シェア50%以上を持ち、海外展開先(湾岸諸国、トルコ、エジプト、アルジェリア、スーダン、モロッコ、カザフスタン)でも高いシェアを持つ。合わせて中東最大の製糖メーカーとして本国市場の首位を押さえエジプトにも展開する。小売事業では本国とUAEでハイパーマーケットやCVSを展開する。その他に売上は小さいが、パスタ、プラスチック製造、乳製品、外食、不動産と多様な事業を国内外に持つ。

 サボラの成功のポイントは、強いこだわりを持たず、投資家として機会に合わせて事業ポートフォリオを形成し、多様な事業に柔軟に対処する経営手法を持っていることである。そもそも同社の祖業である食用油は、母国の制度的環境が機会として揃っていたために成長を遂げた。サウジアラビアは70年代以降オイルマネーで経済成長し、生活必需品市場が急成長する一方で、国内産業育成のため食用油などに補助金と関税保護を提供していた。もともと製造に水や高い技術を必要としない特性もあり、食用油は当時の同国ならではの優良事業としての条件を揃えていたのである。

 その後の事業多角化と国際展開でも、同社では事業機会の変化に応じ、自社の姿をカメレオンのようにどんどん変え、広げていくスタイルが貫かれている。たとえばプラスチック事業は食用油の容器の製造需要に接して始めたものであり、小売事業はモダントレードが浸透する時代に合わせ、合弁相手の事業を取り込んで開始したものである。そこにあるのは、最終的な姿へのプランを精緻に描いて、それを1つずつ実現していくやり方ではない。移り変わりの早い新興国市場で、投資の達人として資金を投じ、残った事業こそが自社の強みになる、と考えるスタンスがそこにある。

 より細かいレベルでは、柔軟な対処能力を持つために、サボラの戦略と組織には3つのポイントがある。