ジョリビーは、1975年にトニー・タン現社長がマニラ首都圏で創業した小さなアイスクリーム店に端を発する。母国フィリピンでは初めて上場した外食企業で、国内では主力のハンバーガーチェーン「Jollibee」が、マクドナルドを市場シェアで圧倒的に上回る。その他多様な外食チェーン展開も行い外食業界の国内首位を確保し、1980年代から海外にも進出している。現在は全体で2800店以上を展開し、うち約600店が中国・米国・東南アジア・中東に展開する。この店舗数は日本の大手ファーストフードチェーンに匹敵する。

 よく言われるジョリビーの成功の理由は、その独特な味である。フライドチキンと米を食べるスタイルと甘口ソースをハンバーガーショップに持ち込むことで、その味はフィリピンの国民食と言われるまでになり、世界に散らばる在外フィリピン人に愛されることで国際展開を成功させた側面がある。しかし、成功の本当のカギはまったく別のポイントにある。

 第1のポイントは、海外展開では1つの手法に固執せず、「攻め方」を自社のステージに合わせて素早く切り替え続けていることである。同社は1980年代半ばには、すでに海外展開を開始していた。当初の攻め方は、華僑の人脈を使って出店できる国があれば速やかに出店し、うまくいかなければ1~2年で見切って撤退する高速実験を繰り返すパターンだった。

 初期の手法でも東南アジアではいくつかの国に足がかりとなる拠点を残すことができたが、1990年代にはより組織的なアプローチを目指した。先進国で外食チェーンのマネジメント経験のある人材を海外事業トップに採用し、海外事業を国内事業と切り分け、市場分析に基づく計画的出店を目指した。その分析ロジックは、フィリピン人出稼ぎ労働者の多さと、経済水準に対する外食チェーン市場の成熟度である。結果として、米国と中東のフィリピン人が多い都市を中心に、一定のプレゼンスを確保していった。

 しかしこの方法では、大市場であっても「Jollibee」の味が好まれない国・都市には進出できない。その結果、2000年代からは、自社主力チェーンの海外進出・店舗展開ではなく、内外外食チェーンのM&Aを通じた成長へと大きく舵を切っている。

 そして第2のポイントは、海外で国ごとに異なる嗜好に合わせ、出店するチェーンそのものを多様化させ使い分けていることである。同社では、「Jollibee」ブランド店舗を出店することで、在外フィリピン人の固定客をつかめる。しかし、同社が行うグローバル事業展開の本質は、もはや本国で成功した「味」の輸出ではなくなっている。むしろその強みは、培った経営ノウハウを活用し、ローカルに合わせた店舗形態や味覚を、各国それぞれに試行錯誤して作り出し広げていくことにある。現に、度重なる買収やパートナリングを通じ、そのチェーンポートフォリオは国ごとにまったく違い、実に多彩な顔ぶれを揃えている。

 たとえば中国では、独特の巨大な中華料理ファーストフード市場が成長している。そのため、同社の中国での店舗は中華料理チェーンである。2004年に牛肉麺などの「永和大王」、2007年に粥料理の「宏状元」を買収、2011年には「三品王」と合弁を組み、以来これらを全国規模で展開し店舗数を増している。

 また同社は母国の経験からチェーンオペレーションを確立しており、中国では上海に情報センターを、安徽省に加工調理工場を新設し、品質を担保し中国内を統括する物流システムを構築した。強みであるオペレーション革新の能力を適用し、店舗増を支えるインフラを構築したことが成功の大きな理由となっている。