信念を生きる組織とする”Walk the talk”:多くの企業で企業信念は存在し明文化されているが、日々の業務や一個人の活動にまで浸透しているというと、必ずしもすべての企業で実現できているとは言い難いのではないか。企業の掲げる信念が日々の活動の基盤にまで浸透するには、常にマネジメント層が行動で体現すると同時に、繰り返し組織全体にメッセージとして発信してゆくことが根幹となる。

 グーグルで実践されている例として、毎週開催される、ラリー・ペイジやセルゲイ・ブリンなど創業者やリーダーたちが自分たちの言葉で直接社員に語りかけるTGIF(Thank God It’s Friday)をあげられる。新サービスの事前発表、四半期ごとの会社としての目標(OKR:Objective of Key Results)、決算報告の結果などあらゆることを各部門の担当幹部が直接自分たちの言葉で話してくれる。社員は、経営の根幹に関わる情報をカフェテリアでリラックスしながら聞き、疑問があれば直接質問する。

 こうした試みだけではなく、日々のミーティングの中でマネジメント層が、様々な意思決定の背後にある信念を繰り返し伝え、徹底的に企業信念やミッションを浸透させている。

 企業としての信念が浸透していることは、社員をエンパワー・信頼することの基盤となる。これは社員の能力とモチベーションを最大化するだけではない。こうした信念が確固たるブランドの確立につなり、一緒に働いてみたいと思ってくれる人や社外のパートナーを惹きつける源となり、飛躍的にイノベーティブな仕事を実現できる好循環を生む。

この連載の結びに

本連載では、デジタルテクノロジーの進展とともにどうマーケティングを発展させるべきかというテーマに基づき、

 Why-- なぜデジタルテクノロジーをマーケティングに活用すべきか、デジタルテクノロジーにより生活者はどう変わったのか
 What-- デジタルテクノロジーを活用するために何をすべきか
 How --それを実現するために必要な組織やオペレーションのあり方

 という3つの視点から、現時点で考えうる解をできる限り提示することを試みた。

 最終回では、ユーザー中心のマーケティングの時代に求められるマーケティングのあり方としてイノベーションをとりあげた。奇しくもイノベーションを志向するマーケティングの実現にあたってのポイントの4つのうち2つは、第1回でとりあげたデジタルテクノロジーで起こったマーケティングの変化に相通ずるものである。マーケティングをよりイノベーション志向に変えていく流れはもはや止められない。

 スマートフォンに代表されるテクノロジーの浸透は、Micro-momentsなど、これまでにない価値あるユーザーとの接点を飛躍的に増加させており、今後もこうした変化は加速してゆく。マーケティングが大きく進化できる今の時代はとてもエキサイティングである。同時に、その可能性を最大化するにあたっての課題の大きさも改めて感じている。

 グーグルも、こうしてみたいと思いながら、まだまだできていないことが多いのも事実である。今後も、多くのビジネスリーダー、マーケターの皆様と共に、デジタルテクノロジーを活用してマーケティングのもつ可能性をさらに切り拓くために変革を進めていきたいと考えている。そのためにも、常に大きな課題やチャレンジに「YES」の精神で取り組み新しいテクノロジーや新しいアイデアを吸収しながらマーケティングを進化させていきたい。