企業信念の浸透・日々の活動への定着

 社員一人ひとりが与えられた自由度の中で、率先してイノベーションを実現するためには、企業の信念やミッションを浸透させることが不可欠である。それにより、大きな裁量の中でも皆が信念を共有し、その信念のもと多様なアイデアを生み出すことにつながる。

信念がインスピレーションを与える:企業のミッションや信念のもたらす最大の価値の一つは、社員ひとりひとりが自分の携わる仕事が企業の利益を超えた意義を持つ、と感じることができる点である。例えば、グーグルには「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使いやすくすること」というミッションがある。完遂に数百年を要すると言われる大きなミッションであるが、人々の生活にもたらすポジティブなインパクトははかりしれない。それがグーグルで働く社員のインスピレーションとなり、アイデア、イノベーションを生み出す力の源泉となっている。

信念がブランドの基盤となる:イノベーションを生み出すために社員をエンパワーすることの弊害は多種多様、いいかえれば雑多なアイデアや製品、プログラムが乱立してしまうことであろう。これではせっかくのイノベーションもブランドへの信頼と愛情を培うためにはマイナスになってしまう。そこで大きな役割を果たすのが先にあげたミッションや企業の信念である。例えばグーグルでは「テクノロジーによるイノベーションが人々の生活や世界を良くする大きな可能性を信じる」という信念が存在し、日々の業務において物事を判断する際の価値観として根付いている。

 さらに「グーグルが掲げる10の事実」という企業の行動指針といえるものがあり、掲げられた指針の多くは実際に日々の業務の中でもくりかえし引用される。最初に掲げられているのは「ユーザーファースト」だ。それは企業の収益より、生活者の価値を優先すること。世界中の人々が訪れるグーグルの検索トップページも、ユーザーが少しでも早く必要な情報にアクセスできるよう、サイトが表示されるスピードを優先し、関連性のない広告を掲載して収益化することはなかった。AdWordsのオークション広告においても、圧倒的に高い金額を提示しても、ユーザーにとって価値ある情報でなければ広告として掲載されない。何よりもまずはユーザーの利便性を一番に考え、それができれば、他のものは後から付いてくると考えている。

 こうした信念は社内のいたるところで生み出される新しいアイデアに、一定のフレームワークを与えることになり、イノベーションと同時にブランドとしての一貫性を担保することにつながる。