イノベーションを促進するためのデータ活用

 デジタルの発展と浸透は、マーケティング活動のデータの量と質を飛躍的に発展させた。それは組織的にイノベーションを促進するための重要な下地にもなる。

データに基づく意思決定:社員一人ひとりに自由度を持たせて仕事ができる環境を整えると、革新的なアイデアや、新規プロジェクト案が次々に生まれる。結果として、どれを継続するのか、どれに投資するのか、マネジメントにとって意思決定の局面が飛躍的に増える。正しい意思決定のためには、マネジメントの経験や過去の知識ではなく、データに基づいてバイアスを排することが大切だ。「誰が言ったか」ではなく、「なぜ」提案されているかを正しく客観的に捉え、判断する。これにより、思い込みを上回る新しい発見や、不可能に見える大きなアイデアに投資することができる。同時に例えば経験の少ない社員のアイデアであっても採用されることで、新たなイノベーションを起こせるという事実が共有され、イノベーションカルチャーの強化にもつながる。

データから新たなインサイトを生み出し、アイデアを立案:データを分析し、新たなインサイトを得ることで、今まで見えなかったことが見えるようになる。そして新たな発想にもつながる。ただし、データが組織のあらゆる場所に散乱している状態では、全体像が見えず、意味ある分析はできない。また、例えばPOSデータなど、必ずしも顧客分析のために入手しているわけではないデータは、そのままでは使えないこともある。求めているデータの枠組みを整理し、意味のある形でデータを活用することにより、今まで見えなかったインサイトを得て画期的なアイデアにつなげられる。

データから学ぶ:イノベーションの実現には、新しい取り組みのトライアルを繰り返し、学び、改善していくプロセスが重要である。例えば、1999年にサービスを開始したAdWordsも今では異なるサービスと言っていいほど、多くの改良が行われた。ユーザーのフィードバックに基づき常に改良を行っているためだ。小さく始めて、素早く市場に出し、ユーザーの反応をデータで確かめて改善していく。これによりイノベーションの実現スピードと可能性を格段に増すことができる。

 ある日本企業のマーケティング幹部はこう述べていた。「持っているデータを使い、インサイトを出すということが、現在のトッププライオリティ。日本企業は昔からフリーダイヤルで顧客の声を聞くなど、顧客ニーズの吸い上げができていたように思う。データ量が格段に膨らんでいる中で、キャパシティや能力の問題はあるかもしれないが、データを活用するということは日本人にとっては得意な分野なのではないか。」

 データを分析して得たインサイトをベースにアイデアを立案する、そのアイデアを実行する際にはデータをベースに見直し・改善を行う、そして意思決定はデータに基づいて行う。もちろんすべてのアイデアがデータからのインサイトに基づいて生まれるわけでも、意思決定をするための完全なデータがない中で判断が求められることはままある。しかし、直感から生まれたアイデアや判断をデータ検証する、あるいは学びを得ようとする姿勢が浸透することが重要である。デジタルテクノロジーによって、データで検証できることは飛躍的に増大している。デジタルテクノロジーの最大の果実のひとつであるデータを駆使することで、イノベーションが促進される。