最も印象的だった言葉は

 はじめてお会いする稲盛さんは、とにかく相手の話しを注意深く聞かれる方でした。これまで相当数の取材を受けてこられたでしょう。相手の聞きたいことなど、話しの途中で分かっておられるに違いない。それでも、こちらが話している最中は決して口を挟まず、時には目をつぶり集中しながら聞く。こちらの質問が終わると、時には質問の意図を聞き直したうえで、ゆっくり話し始める。初対面の相手、しかも一過性の相手に対しても全身全霊で向き合うのが習慣化されておられるのです。

 話し方は常に一定。話すスピードも一定ならば、声を大きくすることも小さくすることもない。間(ま)を意識的に取られることもなく、一言一言、噛みしめるようにお話しされます。

 一般的に会話の90%以上は、話す内容ではない、非言語(ノンバーバル)によるコミュニケーションだと言われます。つまり身振り手振りや話し方から、人は相手の話しを理解すると言います。

 稲盛さんのノンバーバル・コミュニケーションは極めて静的です。話す内容をより強めようとノンバーバルを使うのではなく、むしろ話す内容を邪魔しないようにノンバーバルが与える印象を減らしておられるようにさえ感じます。

 最も印象的だったのは、これだけ長く経営を続けてこられた秘訣を伺った時のお答えでした。社会的使命や利他的な精神をお話しされるのかと想像していたこちらの予想を裏切り、「好奇心です」とおっしゃいました。私心でも事業への欲でもなく、好奇心。ゼロから京セラを大企業にされ、第二電電を創業され、JALの再生も経験された百戦錬磨の経営者は、いまだ事業への「好奇心」は尽きない。稲盛さんは経営者として、日々新たな発見をされておられるのでしょう。我々が経営を知った顔で語るのは百年早いと教えられました。最新号には、稲盛氏の過去の講演録も収録されています。是非ご覧いただければ幸いです。(編集長・岩佐文夫)

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京セラと第二電電(現KDDI)を創業し、さらには日本航空を再建させた稲盛和夫氏。「心をベースとする」経営哲学と、アメーバ経営のような合理的な経営システムが一体となった稲盛経営は、日本のみならず世界からも注目を集めている。本特集では氏のこれまで未公開だった講演録から5本を紹介するとともに、稲盛経営に対して各界から寄せられたコメント、さらに稲盛氏のインタビューを掲載。稲盛経営の本質を考える。

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