ハコ発想の日本企業
ファンクション発想のグローバル企業

日置 やはり根本にはハコへのこだわりがあって、発想が縛られていることにあると思います。僕はこれを「エンティティ(法人)ベース」と呼んでいます。企業活動がグローバル化してマネジメントも複雑になる中、なるべくシンプルにグローバルを回そうとする際に、エンティティ単位に全ての責任を負わせるわけです。しかし、これは一見わかりやすいようで、実は責任の所在を曖昧にしたり、企業全体としてどう動かしたいのかを見えにくくしたりという弊害が出ているのではと考えています。

入山 日本企業では、本社では本社の中の事業部門や間接部門の関係性を線でつないだ比較的細かな図を作成していて、子会社でも詳細度はそれほどではないものの、似たような組織図を作成していますよね。しかし、では全体としてどう動いているのかが推察できるかというと、そうでもない。他方で、欧米のグローバル企業にはそのような組織図がない企業が多いですね。

日置 欧米のグローバル企業は、エンティティをベースにしてもきれいに組織図が描けないんです。IBMやGE、デュポンなど特に米系のグローバル企業では、チャンドラーが提示したような事業部制がいまも色濃く存在していて、「縦目」である事業が強固な軸としてあります。この事業をグローバルでどううまく回すのかが一番の関心事なので、事業の中にリージョンやカントリーの担当を配置するのですが、彼らが所属する場所はある決まった子会社とは限りません。例えば、アジアであれば、シンガポールから見る場合もあれば、香港から見るケースもある。つまり、ハコで固定しないんです。

入山 なるほど。

日置 そして、この縦目の事業活動を支えるのが「横目」であるコーポレートやスタッフのファンクションです。コーポレートやスタッフは、事業が個別最適で走るのをサポートしながら、常に全体最適を意識した役割に徹します。例えば、ファイナンスやトレジャリー、人事やリーガル、さらにはマーケティングやR&Dもこの範疇に入ります。これらの機能の多くは個々のエンティティに抱えそうですが、例えば、グローバルでファイナンス機能は1つという発想で、コントローラーなどを必要とするエンティティがあれば、コーポレートからそのための人員を送り込むという感覚です。さらに、各機能における単純な業務については、できる限り標準化し、コストや時差などを勘案した世界で最適な場所にシェアードサービスセンターを構築、グローバルに分散していた業務を集約して対応します。

入山 この集約化された業務が、時に、GenpactやAccentureといった外部リソースを活用する対象になるのですね。

 

日置 そうです。ちなみに、R&Dについては、基礎研究所や事業毎のR&Dセンターなどにエンティティが分かれていることが多いのですが、個別最適にならないようファンクションとして横串を通す施策を打っています。例えばデュポンでは、コーポレートのR&Dがイノベーションセンターを設けて、事業横断的に自社の技術を集め、そこにクライアントを招いて新しいビジネスを創出しようという取組みをしていますし、他の企業では、コーポレートR&Dの限られた人材が目利きとなり、技術と事業のマッチングを実施しています。
 細かいところを端折ってもかなり説明が長くなってしまいましたが(笑)、つまりは、「グローバルで1つの会社」という認識のもと、機能(ファンクション)をどう配置するのかを考える「ファンクションベース」の発想で組織体制を整備しているということです。