自由へのあくなき信念

 たとえば、グーグルの採用では配属先の上司の意見は尊重されない。むしろ、配属先の部下に面接の権限をゆだねるという。上司は自分にとって都合のいい人を採用しようとする。しかし、それはその人物が優秀かどうかとは関係ない。「自分より優秀な人材を採用せよ」と号令をかけるグーグルでは、「この人から学びたい」という部下からの意見を尊重するのだ。かのグーグルでも採用の権限を現場マネジャーから引き離すのには苦労したという。しかしそれによって同社は階層的な組織ではないことを、社内にも強烈に伝えることができたという。

 人はいかにバイアスでモノを見てしまうかを同社はよく理解しているのだ。誰しも自分の仕事を助けてくれる人を高く評価してしまう。これを許せば、組織の上位者にとって都合のいい人が評価される仕組みが出来上がってしまう。

 これはグーグルが目指す「誰もが自由に発言できる」風土を崩してしまう。

 基本的にグーグルの制度の基礎にあるのは、人に自由を与えればよい仕事するという信念である。モチベーションに関しても同社は、外発的動機からの行動では学習力が弱まると考える。社員に自由を与えることで、内発的動機が引き出され、自然と社員の成長が促されるというのだ。

 本書で触れる範囲は実に広範囲だ。企業文化、人材採用から、人事評価や報酬の決め方まで人事政策に関して、ほぼ網羅している。グーグル人材論の決定版と言えよう。

 その思想はシンプルで美しい。人の可能性をとことん信じる精神である。しかし「言うは易し行うは難し」。仮にトップがグーグル型の人事制度を導入したとしても、現場の管理職が対応するには、ハードルが相当高い。それは、管理職から権限をはく奪することこそ、グーグルの神髄だからだ。偉い人より優秀な人を尊ぶグーグルでは、それでも管理職はチームをまとめ組織の目標を達成しなければいけない。使えるツールは、役職に与えられた権限ではなく、個人のビジョンやリーダーシップ力。同社の管理職は丸腰で、手ごわい相手(部下)と対峙するスキルが求められるのだ。この状況で結果を出す管理職ではないと、グーグルでは務まらないということだろう。

 最も印象的だったのは下記の一文である。「人は根本的に善意だと信じる人もいれば、そう思わない人もいるだろう。善意を信じるなら、起業家として、チームの一員として、リーダーとして、マネジャーやCEOとして、その信念に一致する行動を取るべきだ」。つまりグーグルは徹底しているのである。