会社だけでなはく、働き場所も選ばない時代

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篠田 真貴子(しのだ・まきこ
東京糸井重里事務所取締役CFO。慶應義塾大学経済学部卒、1991年日本長期信用銀行に入行。1999年、米ペンシルべニア大ウォートン校でMBAを、ジョンズ・ホプキンス大で国際関係論修士を取得。マッキンゼー、ノバルティス・ファーマ、ネスレを経て、2008年10月、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する糸井事務所に入社、2009年1月より現職。この度、『ALLIANCEアライアンス』を監訳。

尾原:そうです。このままGoogleでいろいろやってもいいとも思ったんですが、よく考えたら外国人に日本の良さを切り売りしてると気づいてしまった。同じことは日本の企業でもできると思っていたところに、楽天の三木谷浩史さんとのお話があい入社し、決済事業の担当執行役員をやっていました。そして、イスラエルベースのベンチャーViberの買収提携にも関わります。

 そんなことをやっているうちに、個人がプラットフォームになれる時代になったことに気づきます。もともと僕には裏方としての矜持があって、世間に認知される前にその業界にいることが僕のプライオリティでした。表に出るとそれができなくなるという恐怖があった。でも、さすがにここまでやってきた僕という「場」が変化力を持ち始めたので、個人でプラットフォームを持って表に出ようと決心したんです。

 今は、僕はインドネシアのバリ島のウブドゥというところに住んでいますが、日本のFringe81の執行役員としての仕事もしています。ウブドゥが第二のシリコンバレーの匂いがするからです。どこでも働ける時代になったとき、人は「ベースシティ」をどこに置くか。僕は、クリエイティビティが発揮できて、しかも生活しやすい場所に住みたいと思ったんです。

 もともとウブドゥは画家が集まる場所として有名でした。今は、未来の絵を描くクリエイティブシンカーが集まっています。僕がTEDで最も好きな「社会運動はどうやって起こすか」をプレゼンしたデレク・シヴァーズや、ウェルスダイナミクスというモデルを考案したロジャー・ハミルトンもウブドゥに住んでいます。そうした人たちが集まっているところに飛び込んでいくのが、僕の僕たるゆえんでしょ、という意気込みでした。

篠田:今までは会社だったアライアンスの相手が、こんどは場所に変わった。面白い。そういば、あの「どこでも尾原」って面白いですよね。Fringe81の社内で尾原さんが映し出したディスプレイが移動している…。

尾原:今はビデオ会議システムがあるので、目的ベースのミーティングは遠隔地であろうとまったく問題ないんです。でも、ふと思い立ったときのちょっとした会話は、ネットだとまだまだ足りません。会話は「Slack」という素晴らしいツールを使えば、わいわい発言することは可能です。でも、Slackもテキストなのでウェットな会話はやりにくい。だから、目の前で話しているように感じられるロボを使いはじめたんです。

尾原:ほぼ日さんに1台置いていただければ、篠田さんがFringeに来たいときは僕のロボにアクセスすれば誰とでも話せますし、僕がほぼ日さんに行きたいときにはほぼ日さんのロボにアクセスすればフラフラ歩き回れる。いずれそんな時代になると思いますよ。

篠田:面白い。パソコンでアクセスするインターネットは、いわば思考だけがつながる感じです。でもこれは、人としてのインターフェイスに近い気がする。