デジタルの優先順位をあげる仕組み

 デジタルの優先順位が上がらない理由として、効果指標を有効に活用できていない点が挙げられる。マーケティグの投資対効果の可視化は可能になりつつある。以前は異なるプラットフォーム、デバイスにデータが分断されていたため、横断的に投資対効果を評価しにくかったが、技術と分析手法の進歩により、急速に解決されつつある。たとえば、同一サーバーから複数の媒体に広告を配信し、結果を一元的に管理できる「第三者配信」、生活者が接したデジタル広告の最終購買への貢献度を測る「アトリビューション」分析などが広まりつつある。企業はこうした手法を導入することでマーケティング効果を可視化できる。

 一方で、これらの効果測定の仕組みをどうやってオペレーションに組み込んで活用するかは、十分に議論がされていない企業が多い。グーグルにおいては、それぞれのマーケティング施策において、ゴールと達成指標を明確に決めるとともに、施策の開始後は、途中結果を迅速に反映して、広告予算のメディア配分、クリエイティブなどのチューニングをおこなっている。

 また、デジタルテクノロジーの変化が速い環境において、デジタルを取り込みながらマーケティングの成果をあげるためには、絶え間ないイノベーションが必要になる。グーグルでは、マーケティングの一定予算を「イノベーションプロジェクト」に割り当て、新しい試みを推奨している。これは、「本体」のマーケティング施策とは切り離し、「冒険」することを求めるものだ。

 グーグルのマーケティングチームと外部のクリエイター、デジタルメディアのエキスパートが一つのチームとなり、一般的なブリーフィングとプレゼンテーションという流れではなく、ワークショップ形式でクリエイティブ要件やプロトタイピングまで一緒につくりあげる。

 このプロセスを成功させるためには、「ユーザーファーストで考える」「制約条件を全て取り払って理想形から考える」「役職ではなくアイデアにフォーカスすること」などがポイントとなる。これは、ともすればマーケティング施策がテレビCMなど既存のやり方が中心となってしまうことを回避し、こうした取り組みを通じてデジタルの重要性を再確認するものである。さらに重要な点は、常にイノベーションを生み出そうというカルチャーを根付かせることである。

 こうした取り組みから生まれた成功事例は、社内で各国に積極的に水平展開されていく。グーグルの日本チームは、グローバルチームの中でも率先して実験的な取り組みを行っており、日本で成功し、他国に展開されていった事例も多数ある。逆に他国で成功した事例も積極的に日本に取り入れて成果をあげている。

 以上、デジタル化を推進するための組織、オペレーションのあり方について、グーグルでの取り組みを例に考えてきた。重要なのは、デジタルを「デジタルマーケティング」としてメディアの一つとするような狭いとらえ方をするのではなく、「マーケティング全てをデジタル化」させ、マーケティング全体を進化させることだ。そのためには、デジタル活用を前提としたマーケティング組織とオペレーションに変革することが急務である。

(つづく)

*次回は7月31日(金)公開予定

 

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第4回:生活者はどうやって検索しているのか?商品を選ぶ「兆し」をつかむ
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第7回:ブランドが発信すべきは、コンテンツ。グーグルが活用する「3Hストラテジー」とは?
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第9回:デジタル時代のブランド広告効果測定(1) いかに正確さを追求するか
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