デジタル人材の育成

 生活者を取り巻くデジタル環境、デジタルを活用したマーケティング手法は日々進歩している。そのためマーケティングのデジタル人材育成も「これさえ学べばよい」という教科書はない。

 グーグルでは、経験の浅いマーケティングマネージャーの場合、まず規模の小さいプロジェクトの責任を持つ。より経験のあるマーケティングマネージャーのコーチングを受けながら、プランニングから実行まで、デジタルを使ったマーケティング手法について一通りの仕事を通じて学んでもらう。

 一方で、経験のあるマーケティングマネージャーも現状にとどまっていてはいけない。過去の経験が足かせとなることもあるからだ。ときにはアンラーニング(学習棄却)で過去に学んだことを意識的に捨て、新たに知識、経験を身につけ、デジタル時代のマーケターとして成長し続ける努力が必要になる。私がグーグルで多くの中途採用に携わってきた経験から言うと、入社後にその人が伸びるかどうかは、アンラーニングできる柔軟さと謙虚さがあるかで決定的に変わる。経験を活かしながらも新しい考え方を積極的に取り入れていく姿勢が必要である。

 そして人材育成は社内にとどまらない。グーグルでは早くからデジタルを活用したマーケティングに取り組んでいるが、始めた頃は広告会社のクリエイターにもデジタルを理解している人が少なかった。そのため、思い切って、経験はまだ浅いがデジタルに精通している若手のクリエイターたちの力を借り、一丸となって新しいマーケティングキャンペーンを練り上げ高い成果につながった。彼らはその後、広告業界からも高い評価を得て、自らの会社を立ち上げ、現在でもグーグルの「パートナー」として活躍してくれている。

 人材育成には社内外の人に「ここで働きたい」と思わせる、新しいチャレンジやそれによる失敗を許容するとともに、そこから常に学ぶことができる体制が重要である。