戦略から組織デザインを導き
望ましい企業文化を浸透させる

 再び女性の活躍というテーマについて、ハナのモデルで考えてみよう。まず、ビジネス環境とビジネス戦略である。

 国内においては、高齢化の進行により人手不足が長期的に続く可能性が指摘されている。「女性が働きやすい会社」という評判を得れば、質と量の両面で、人材獲得競争を優位に戦うことができる。

 ダイバーシティのレベルアップは、イノベーションの促進につながる。多様なバックグラウンドを持つ社員たちが議論し刺激し合うことで、これまでにないアイデアやまったく新しい商品が創出される確率が高まる。そのためには組織デザインを通じて風通しのよい、フラットな文化づくりを進める必要がある。

 実を言うと、このような取り組みは私自身が実行したことである。2000年代前半、私はP&Gジャパンの人事本部長として女性が働きやすい職場づくり、それを企業としてのパワーに転換させるための戦略策定や実行に深く関与した。

 P&Gの商品は、購入する顧客やユーザーの大半を女性が占めている。こうした事情が戦略づくりの背景にあることは確かだが、だからといって、特殊なケースと見るべきではないと思う。ダイバーシティと競争力を両立させている企業は、幅広い産業分野に存在する。

 もちろん、勝つための戦略は企業によって異なる。業界によって、ビジネス環境にも違いがある。また、今回は女性の活躍という側面を取り上げたが、企業が向き合うべき変革テーマはほかにも多い。人材の領域では、海外での人材獲得やキャリアプラン、離職率の適正化なども重要なテーマになるだろう。こうした分野においても、組織デザインの基本的なアプローチは変わらない。

 ビジネス戦略や組織デザイン、望ましい企業文化は百社百様だ。P&Gを含めダイバーシティ先進企業のアプローチが参考になることはあっても、まったく同じ道をたどることはできない。それぞれの企業、経営者、人事をはじめとする関係部門が自ら考えるほかないのである。

 その一連のプロセス、とりわけ組織デザインの領域で人事部門は中核的な役割を担う。たとえば、組織構造を見直す際には、トップマネジメントの議論を支える事務局役が期待されるだろう。評価制度や報酬制度づくりでは、有効に機能するプランづくりが求められよう。情報システムについていえば、組織や人材の現状、パフォーマンスなどを可視化するためのKPIの検討などがテーマになる。

 また人事部門は、女性が活躍できる環境が整っているかを把握するための意識調査とアクションプランなども主導することができる。女性の活躍になくてはならないものは柔軟性のある就業規則である。人事部門は柔軟性のあるポリシーをデザインし、環境の整備を行う必要がある。

 組織デザインの実務を担う人事部門、一人ひとりのメンバーには高度な専門性が欠かせない。アカデミズムの研究動向や先進企業の実践的な知見を積極的に得ながら、海外のグローバル企業が脅威に感じるような、新しい時代の組織デザインをつくり上げる。それが、いま日本企業に求められていることである。

 同時にそれは、私自身の日本企業に対する願いでもある。簡単なことではないが、日本企業の底力をもってすれば必ず達成できると確信している。