次のステップは「診断的な問い」で、相手のストーリーにおける特定の要素に注意を向けさせるためのものだ。たとえば感情や反応、根本にある原因や動機、実際に起こした行動や企図した行動などである。「クリスに対して苛立っているようだね。君たちはどういう関係にあるのかな?」、「君のチームは最近ちょっとぎくしゃくしているみたいだね。何かあったの?」、「その目標は、この案件においてはかなり大胆だね。どんな達成計画があるのかな?」といった質問だ。

 次のステップは「対立的問い」だ。響きがやや紛らわしいが、シャインが言わんとするのは相手と対立せよということではない。別の新たな見解や仮説を持ち出すことで、相手の認識をあなたが理解した内容と置き換えてもらうのだ。「クリスの欠点を話しているけど、君自身にも問題の一因がもしあるとしたら、何が考えられるだろう?」、「君のチームは強いストレスにさらされているわけだね。異動で人が入れ替わったことは、メンバーの協力体制にどんな影響があったのかな?」、「それは画期的なプランだ。でも不確定要素もたくさんあるね。スケジュールが遅れた場合、何が起こるだろう?」といった具合だ。

 コーチングの対話では、最初のステップにできるだけ長い時間をかけることが極めて重要だ。自由回答式の問いから診断的な問いへとすぐに移りたい、リーダーとしての権威を用いて特定の問題に焦点を当てたい、という衝動を抑えねばならない。純粋な問いにかける時間が長ければ長いほど、対話のなかで部下自身の創造的な解決策を引き出せる可能性が高まる。問題に直面している者のみが持つ知識が、次第に浮上してくるからだ。

②耳を傾ける

 耳を傾けることは、ただ聞く(聞こえる)こととは違う。聞こえるというのは受け手の内部で起きる認知プロセスであり、音声を認識し、解釈し、理解することだ。耳を傾けるとは、2者間で行う全身体的な行為であり、相手に「心から聞いてもらっている」という感覚を与える。

 コーチングにおける傾聴では、アイコンタクトが非常に重要となる。気まずくなるほどでは困るが、通常の会話よりもしっかり相手を見よう。表情やしぐさ、顔のけいれんなどから、相手について多くを知ることができる。そしてこちらの関心の深さと真剣さが相手にしっかりと伝わる。

 うまく耳を傾けるためには、意識を集中させることも必要だ。コーチングは本質的に、他の作業と並行しながらできるものではない。何かをしながらでも話は聞こえるだろうが、心から耳を傾けていることが相手に伝わるような聞き方はできない。気が散る要因を排することが必須となる。携帯電話の電源を切り、ノートパソコンを閉じ、邪魔が入らず2人だけで話せる場所を見つけよう。

 もちろん、コーチングの対話は電話でもできる。その場合、「ながら聞き」をしないことがいっそう重要になる。視覚的な情報を得られない分、相手の言葉からわずかな手がかりをとらえる必要があるからだ。

 私の経験では、対話中に時々短いメモを取ると集中力を持続しやすくなり、情報を作業記憶に保持する負担が軽減できる(ほとんどの人は、せいぜい5~7個の情報しか覚えていられない)。ただし、メモを取ること自体が気を散らす要因になる場合もあり、相手の発言を正確にとらえることに気が向いてしまうと傾聴がおろそかになる。コーチングの対話は証言ではないので、速記者になるのはやめよう。メモの必要がある時は1度に1つの単語かフレーズを書き、あとで思い出すための最低限の手がかりにすればよい。