すべては顧客への価値提供のため

篠田:アライアンスによる信頼関係を結んでも、成果が出ないケースはあります。安渕さんは引っ張り上げるとおっしゃいましたが、引っ張り上げた結果うまくいかなかったときは、どうされるんですか。

安渕:いくつかやり方がありますが、その人にとって責任が大きすぎた場合は、仕事を分けてしまうこともあります。ひとつの大きなチームに、プロセス中心の仕事と分析中心の仕事が入っていたとしましょう。トップが両方を熟知していればいいのですが、分析が苦手の人は分析のチームがうまくマネージできない。その場合はプロセスのチームと分析のチームに分けて、分析にもヘッドを置くという考え方もあります。仕事の成果を上げることが目的なので、組織なんかいくらでも変えていけばいいんです。場合によっては降格人事もあるので、いったんワンステップ下がって、再びreadyになるのを待つということもやります。無理に引きずってしまうと、本人が辛くなるだけですからね。

篠田:50歳でフィードバックを受け、責任に耐えられないから権限を縮小され、荷が重いから降格させられる。日本人の感覚ではプライドがズタズタになりますね。

安渕:そこは、いかに自分と自分の上司との間に信頼関係があるかが物を言いますね。単なる職制としての上司ではなく、メンターでもある。その人は自分の部下の成功を気にかけてくれていることはわかっています。成長という意識があることをお互いが理解するためのコミュニケーションがあって、はじめて成り立つ仕組みだと思います。

篠田:今までのお話をお聞きすると、「外資系企業は人間関係がドライで、日本企業は人間味がある」という日本で一般的なイメージが覆されます。人は仕事をしている以上、目の前の仲間やお客さまに喜んでいただくことも本源的な動機に直結すると思います。GEの仕組みは、自分の仲間が喜んでくれて、お客さまにより良い価値が出せるようになった実感と重層的に組み合わされることで、従業員にも納得されるのでしょうね。

安渕:GEは、大小さまざまな形で従業員を表彰します。お客さまが喜んでくださったことを会社も喜び、それをみんなで祝福するサイクルを回していくことができれば、今日も仕事をしてよかったと思って帰れる。そういう人たちが増えて欲しいという考えのもとにやっていますね。でもそこは、ほぼ日さんと一緒じゃないですか。

篠田:おっしゃる通りですね。まだまだ小さい会社なので自然体ですが、今後は仕組化が大事なテーマになると思っています。うちはウェブのBtoCのビジネスなので、お客さまからの反応が見えやすい。しかも社内全員がそれを見える環境で、そこは崩してはいけないと思っています。「見られていること」がお客さまとの信用や信頼関係を高めようとする大きな原動力ですから。

安渕:それをみんながわかっている状態はいいことですよね。

篠田:今日はありがとうございました。会社と人のフラットで互恵的な関係や「人に優しい」ということについて思い込みを覆されるようなお話でした。

 

【連載バックナンバー】
第1回:終身雇用はこれからも続くのでしょうか
   君島朋子(グロービス)×篠田真貴子(東京糸井事務所)

第2回:GEでは年齢に関わらず成長を実感できます
   安渕聖司(GEキャピタル社長)×篠田真貴子(東京糸井事務所)【前編】