篠田:安渕さん抜きで?

安渕:そうです。私について知っていること、知りたいこと、自分たちについて知って欲しいこと、変えて欲しいこと、変えて欲しくないことをとにかく出す。3時間ぐらい経ってから部屋に呼ばれると、意見がすべて書き出してあるんです。自分が気づいていないことは新たな学びになりますが、それは違うだろうということも出てくる。でも、それを聞いて怒って出て行ってしまうような人は、リーダー失格と見なされてしまいます。人の意見を受け止める度量と、どれだけ変われるかが試されているんですね。

篠田 真貴子
(しのだ・まきこ)

東京糸井重里事務所取締役CFO。
慶應義塾大学経済学部卒、1991年日本長期信用銀行に入行。1999年、米ペンシルべニア大ウォートン校でMBAを、ジョンズ・ホプキンス大で国際関係論修士を取得。マッキンゼー、ノバルティス・ファーマ、ネスレを経て、2008年10月、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する糸井事務所に入社、2009年1月より現職。2012年、糸井事務所がポーター賞(一橋大学)を受賞する原動力となった。この度、『ALLIANCE アライアンス』を監訳)

篠田:すごいですね。前回おっしゃったご自身が2006年とは別人になっているという話が腑に落ちます。

安渕:日本企業では、そういう機会がほとんどありません。もともと、私は会社という枠の中で優秀だと言われることに疑問がありました。会社の中だけで物事が完結しているわけではないのに、会社の中で優秀だと言われることにどれほどの意味があるのか。GEに来ると、待ってましたとばかりにフィードバックがある。それをどう受け止めて、どう変わっていくかは、まさに自分次第なんですね。

篠田:安渕さんが受けてこられたフィードバックに耐えられるかどうかは別にして、その環境に身を置きたいとは思います。でも、そう思わない方もいらっしゃいます。

安渕:その通りです。ただ、本質的に人間は褒められたいし、昨日より今日がよくありたいと思っているはずです。それを人と比べるからおかしな話になってしまう。生き生きと能力を伸ばせる環境は、人によって異なります。場合によっては、同じ会社の中で成長できるとは限りません。その人にとって最適な場を見つけるためであれば、快く送り出します。

 私は辞めていく人が挨拶に来てくれると、必ず名刺を渡すんです。そして「GEで何年もやってきたのだから、あなたは入社したときは違う人です。だから、必ず新しいところで活躍してください」と言って送り出します。GEが面白いのは、あるポジションの後継者を決めるときに、見慣れない候補者が入っていることがあります。別の会社にいる元GEの社員です。実際に戻ってきた人もいます。

 人の成長は、必ずしも直線的に上がっていくとは限りません。だから社内で転職するようなことをするのですが、場合によっては外に出るほうがいいこともあります。何年か経ってポジションが空いたときに、出て行った人がreadyになっていることもある。それを生かそうという考え方です。ポジションが高くなれば仕事は難しくなり、複雑になり、ハードワークになることは明確です。責任も重くなるので、ただ単に出世したいだけでは務まりません。私たちとしてはできるだけ引っ張り上げようとしますが、難しいミッションにチャレンジし、成果を上げられるかどうかは、自分で考えなければなりません。