マネジャーが研修で3週間不在。それでも回る組織をつくる

篠田:安渕さんもクロトンビルに行かれたことがあるんですか。

安渕:もちろんです。私は50歳でGEに入社して今年10年目に入ったところですが、9年の間にクロトンビルの研修に7回参加しています。それだけ会社が人材に投資をしているということですね。このレベルに達したら、次はこのレベルまで行け。これでもかというほどリーダーシップを叩き込まれます。普通の会社では、ポジションが上になるほど研修は少なくなっていくものです。でも、GEはむしろ濃くなっていくんです。研修は長くて3週間ありますからかなり大変ですし、その裏にはリーダーとしてのテストも隠されている。つまり、どれだけ自分のチームをしっかり作れているかのテストです。

篠田:そうか。リーダーが3週間いない間、部下がちゃんと仕事を回せるか。

安渕:そう。部下に仕事を任せて、回せと。その間は、とにかく研修に没頭しろと。仕事をしてはならないし、メールにも返信してはいけない。1日1回秘書から来るメールだけしか見ない。権限委譲していますから、あとは一切お任せ。研修中に仕事をしていると、「あいつはチームをちゃんと作れていない」と見なされるんです。そんな雰囲気での研修は、ものすごく密度が濃い。毎年のように参加するので、前の年にできなかったことが今年はできるようになっているというのがよくわかるんです。だから、入社したころと現在の私では、中身としてはまったくの別人になっていると思いますよ。

篠田:そう言い切れる安渕さんが素敵です。私もそんな50代を過ごしたい。

会社と従業員のアライアンスが優秀な人材を生む

篠田:ただ、いくらクロトンビルの研修を拡充しても、育てた人が転職していく可能性は否定できません。この本にも、優秀な人ほど出て行ってしまうため、経営者が人材投資をすることに二の足を踏むと書かれています。GEはその点をどうお考えですか。

安渕:現在、GEには8つの事業部門があるので、そのなかで転職の機会を作ろうとしています。ある職務に就いてから2年経過すると、上司の事前了解なしに他の職務・事業部へ移籍できる「社内ポスティング制度」があります。優秀な人に刺激を与え続けるため、仕組みとして構築しているのです。しかしそれは、上司にとっては違う意味を持ちます。優秀な部下とコミュニケーションをとっていないと、ある日突然、部下から別の事業部に移ると宣言されてしまうのです。優秀な部下が、自分の手元に永遠にいる可能性はありません。彼らが何をしたがっているか。彼らの目標と会社の目標をどうやって一致させるか。上司はそれについて必死に考えなければならないのです。

 ただ、GEのリーダーには優秀な部下を輩出することをプライドとするカルチャーがあります。私も、自分の部下を引き上げることを考えます。自分より上のポジションにいく可能性もありますが、それもプライドなんです。

篠田:その話は面白いですね。人を大事にすることの本気度を感じます。でも、日本の大企業の方からすると、驚天動地の話に聞こえるでしょうね。