「デジタルリーダー」が少ない日本

 ここまで、アジア太平洋地域の企業で共通で見られる4つの課題を並列に述べてきたが、日本企業に特有なことはあるだろうか?

 今回の調査では、マーケティングにおいてデジタルを活用してインパクトを実現していると答えた企業を特定し、それを「デジタルリーダー」と名付けた(注3)。この比率が、アジア太平洋地域全体では平均19%であったが、日本に本社を置く企業では8%と半分以下だった。

 その理由も興味深い。「マーケティングに携わる人たちに、新しいことへの挑戦を奨励している」「デジタルの活用は最も重要な戦略的課題の一つである」に賛同した人の割合が日本では低かった。そして、全体平均との差を見た際、最も顕著に差が開いた項目は、デジタルの活用が進むにあたり「今までよりもさらにブランドの目的・位置づけを明確にする必要がある」という項目であり、マーケティングそのものに対する意識の違いが浮き彫りになった。

 デジタルテクノロジーのメリットを最大限に享受するには、マーケティング活動、ひいては企業の活動を俯瞰的に見て、どのように活用するかという視点が求められる。例えば、データ一つとっても、ブランドと生活者の様々な接点で取得されるデータを統合し分析することで、初めて意味のあるインサイトとなる。しかし、組織が分断されていると、断片的にしかデータが取れず、意味のある打ち手には繋がらない。

 ある広告会社の幹部は日本企業の現状をこう語る。「組織の縦割りと目的意識の非共有こそが最大の課題。ボトムアップで知識や経験を集めていくことはできている。リソースが課題という感じも薄くなってきている。 一定以上の役職の人間が、どういう意識で臨むかが課題なのではないか。」またこの幹部は、「習慣として継続していることを変えるのは難しい。『変えない事』を正当化する理由はたくさんある中で、変えるための労力、そのモチベーションをどう作るかも課題だと思う」とも話している。

 日本企業ではデジタルが重要な戦略課題であるとの認識をマネジメントの中で共有し、新たな挑戦ができないことがネックになっているのだろう。次回、このような現状を踏まえて、デジタルの活用を推進し、マーケティングを進化させていくために何が必要かの打ち手について、グーグル自身の取り組みを踏まえてご紹介したい。

(つづく)

*次回は7月24日(金)公開予定。

【注】
(1)媒体別メディア閲覧時間に占めるデジタルメディアの割合は46%(博報堂メディア定点調査2014)と広告費に占めるデジタルメディアの比率は17%(電通:日本の広告費2014)の差
(2)2014年3-8月にTNSと協働で実施。オーストラリア、シンガポール、インド、中国、日本の5カ国を対象。一次定性調査(回答者数18名)、二次定量調査(回答者数366名)
(3)デジタルメディアの利用度合いとそれによるインパクトの実現度合いに関する質問の回答をベースにクラスター分析を実施し、積極的にデジタルを利用しインパクトを実現しているとしたセグメントを抽出

 

【連載バックナンバー】
第1回:デジタルテクノロジーによってマーケティングはどう変わるか
第2回:記録と記憶は異なる――大きく変化する生活者の日常を捉える
第3回:これからの生活者分析――人々の行動を基点に生活者を理解する
第4回:生活者はどうやって検索しているのか?商品を選ぶ「兆し」をつかむ
第5回:コンサンプションからエンゲージメントへ――新しい情報・コンテンツ発信のカタチ
第6回:ターゲティングはマーケティングの活動の羅針盤――グーグルで現在進行中の実験
第7回:ブランドが発信すべきは、コンテンツ。グーグルが活用する「3Hストラテジー」とは?
第8回:マーケターにとって見逃せない瞬間「Micro-Moments」とその活かし方
第9回:デジタル時代のブランド広告効果測定(1) いかに正確さを追求するか
第10回:デジタル時代のブランド広告効果測定(2) きめ細かく、リアルタイムに