課題1:従来型マーケティングに最適化した組織
 デジタル時代のマーケティングでは、クロスチャネルやクロスメディアなど、生活者との様々な接点を意識したマーケティング活動が求められる。また、リアルタイムで広告測定データのフィードバックが得られ、効果を最大化するにはスピードの速い柔軟な意思決定や対応が求められる。しかし、縦割り組織で、年間計画を中心とした確固とした業務プロセスが存在する中では柔軟かつタイムリーに活動を進めることは難しい。

 例えば、多くの企業ではテレビ広告など従来の施策を中心としたキャンペーンを計画・実行するための業務プロセスが存在する。広告宣伝と販促で部署が異なるなど組織も細分化している。ここで生活者に浸透するスマートフォンを活用したキャンペーンを実施するとしよう。スマートフォンで、モバイルサイトに加え、店頭やコールセンターに生活者を誘導するキャンペーンの場合、店舗やコールセンターに与えるインパクトをそれらのチャネルを統括している部署と協働でトラッキングし、それを踏まえて予算を最適化する事により効果を最大化できる。だが、従来の組織ではそもそも連携が取れていないことも多く、部署を超えての予算配分が難しい。

 また、台湾のパソコンメーカーであるエイサーのCMOは、既存のやり方に固執する態度を指摘する。「従来通りに屋外広告を出したり、地元のゴルフイベントへの協賛を求める人もたくさんいる。今までと同じことをやりたがるんだ。」通年の業務プロセスに沿ったメディア配分を維持するなど、今までの慣例が前提の組織を変えなければならないことも、変化のスピードを遅らせている。

課題2:共通言語化されていないデジタルの 投資対効果指標
 デジタルテクノロジーの発展により、マーケティング費用の投資対効果の『見える化』は可能になってきた。一方で、どの指標を使うか、何をもって効果があったとするかは、企業内に確立しておらず、社内外誰でも共通認識を持つことは難しい。

 例えば、大規模投資の典型であるテレビは、『GRP(述べ視聴率)』という指標により、今後どれだけ投資するかや、今までどれだけ投資したかを社内外に伝えることができる。必ずしも、広告が生活者に与えるインパクトを明らかにしているわけではないが、業界標準として幅広く認知され、便利な指標として使われている。

 デジタル広告の効果測定には、「CTR(クリックスルー率) 」 や 「CPA(顧客獲得単価)」だけでなく、 「いいね」「+1」「ツィート」数など、無数に指標が存在する。しかし、どの指標も全体を俯瞰しておらず、また他の広告投資と並列に効果を比較できない。

 デジタルを活用した取組みは、豊富なデータ量と新規性から、成果がどうであったかの説明責任を問われる。その際に、共通言語が存在しないと、成果を社内外で幅広くアピールできない。さらに、”精緻なターゲティング”に基づく広告投資は、あらゆる人に広告が届くわけではなく、いわゆる『やった感』も出にくい。結果、活動そのものが組織全体に広まりにくい。