《自己変革力の条件3》変革を継続する

 変革の継続には、組織としての学習能力が鍵を握る。

 組織が自ら変革できる体験を、当たり前に日常の行為として“再現”できる組織は、変革を継続できる組織である。あえて再現と表現したのは、一度は変革を実現した組織でも時間が経過することで、再度、同じような変革をできなくなってしまう組織が多いからだ。

「先(時間軸)」や「外(市場)」の変化に応じて組織内のいずれかの人間が変革のきっかけの気づきを知覚しても、その影響が限られた個人や組織の範囲に留まっていては、組織全体に変革の動きは広がらない。

 その動きを組織の広範囲に伝播させるためには、意思決定層や経営と現場、組織間の横断的なつながりをつくることだ。そうなれば、組織内の一部の気づきを組織内で共有化することが可能になり、変革の経験を蓄積し、日常化できる。こうして経営から現場に至るまで、変化を促す価値観が日常化され行動に落としこまれると、そこに風土が醸成されやがて定着してゆく。

 ヤマトホールディングス会長の木川眞氏は、組織が変わり続けていく秘訣は、常にお客さまのニーズを把握し、それに対して何ができるかを考える、常に新しいことにチャレンジするマインドを育て、「挑戦する風土をつくること」と言う。
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 また、東京エレクトロン社長の東哲郎氏は、激動の半導体業界で持続的に成長するためには、会社の上から下まで全員が若い精神、若いエネルギーを持ち、この業界だからこそ、会社全体として「変化をいとわない、自ら変化することをよしとする文化」が必要と強調する。
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 変わることをよしとする価値観の下、組織としての経験から学習し蓄積できれば、新たな「気づき」を得たあとの変革が再現できる。この「気づき」と「組織的学習」のメカニズムが機能し、変化し続けることに前向きな風土や企業文化が醸成されることで、自己変革は継続するようになるのである。

自己変革力をもたらす
3つの連鎖

 組織が「長い時間軸を持つ」「自ら気づき変化する」「変革を継続する」といった自己変革力の条件を身につけるためには、どのようにすれば良いのだろうか。それには、自ら変革を持続させるための仕組み(メカニズム)を築くことが必要だ。

 そのメカニズムのポイントとなるのが、先に見たように、変革を妨げる「断絶」を乗り越え、「時間軸」「市場」「組織内」の3つの文脈での“つながり”を持つことだ。さらに加えて、自己変革を続けるには、つながりを持ち続けるメカニズムを構築することが重要になる。変革を一過性に終わらせずに持続的なものにするためには、長期に渡って相互に影響し合って、一つの体系を織り成すつながりが求められるのである。ここでは、これを「連鎖」と呼ぶ。

「時間軸」および「市場」とのつながりの中で組織が自ら変革の必要性に気づき、そして「組織内」で変化することへの学習から変革の再現性を持つこと、こうした「3つの連鎖」が相互に影響しあうメカニズムができることによって、組織の継続的な自己変革が可能になるのである。すなわち、この「3つの連鎖」がもたらす自己変革のメカニズムこそが、持続的成長への道を拓いてゆくのである。

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