三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏は、持続的成長を可能にする時間軸のあり方について、「儲ける軸」はマンスリー(月次)、クォーター(四半期)単位という時間軸、「技術やイノベーションの軸」は10年や20年とディケイドの単位、そして、会社としてのブランド価値、CSRとか地球環境の保全などは「センチュリー」単位で考えていくものであり、その多元的な軸を持って全体を最適化することが経営であると言う。
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 まさに経営は、短期的な足元の財務的成果、技術開発に要する期間、社会的インパクトや認知を生み出すための時間など、経営を構成する要素や対峙しているステークホルダーによって時間軸が異なるものの集合体である。自己変革力を持つには、まずは、多面的な見方で時間軸を捉えること、そのうえで、マネジメントサイクルの視野においては、月次などの短期と10年先や長期を同時に見ることが重要なのである。

《自己変革力の条件2》自ら気づき変化する

 持続的成長には、平時から能動的に仕掛けていく変革が必要だが、変革の必要性に自ら気づき、変革を継続することは簡単ではない。この変革の必要性に対する“気づき”は何によってもたらされるだろうか。

 いつの時代も変革に成功した企業の根底にあるきっかけは「危機感」だ。現状のままで停滞すること、下落していくことに対する危機感が組織の変革を突き動かす。業績低迷や明らかな苦境に陥ったような有事には、誰しもが危機感を持つが、平時から常に危機感を持ち続けることは難しい。

 平時でも危機感を持ち、自ら変革の必要性に気づくには、将来(時間軸)に加えて外部(市場)に、より強い“つながり”を持つことが必要である。

 まず、平時から危機感を持てるようになるには、「先のこと(時間軸)」「外のこと(市場)」をいかに「我がこと」として捉えられるかが重要になってくる。

 そして、平時から危機感を持って自己変革できる組織になるためには、「将来起こりうる変化を予測できる洞察力」と「外部で起こる変化を客観視できる観察力」がともに必要である。

 先の予測が困難で不確実な時代こそ、過去から積み上げてきたやり方が通用するとは限らない。市場の変化が加速し顧客ニーズが高度化している現在においては、従来の延長線上で徐々に変わっていくスピード感で組織は生き残れない。顧客ニーズを自ら先取りし、それに向けて組織が変わってゆくことが求められるのだ。

 日本GEのCEOである熊谷明彦氏は、顧客のニーズを先取りする組織をつくる要諦は、目的意識を「勝つ」ためと明確にすることにあり、その「勝ち」とは、お客様に頼まれる前に提案ができる「お客様のベストパートナーになる」ということと定義する。平時から顧客をはじめ外部のステークホルダーと直結して、起こりうる非連続な変化を“先取り”すること。それを起点に自ら変わることに成功した組織こそが成長できるのである。
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