自己変革力を持つには、まずは時間軸の捉え方が重要になる。

 以前であれば現状の延長線上で3年後を見通すことはそれほど難しくはなかった。しかし、先行きの不透明さが増している時代には、正しく先々を予測することは難しい。そこにおいて、時代を超えて変革し続けてゆくには、一見矛盾するような「短期」と「長期」の見方を両立させることに、時代を乗り越える鍵がある。現状の延長線上で中期を見るのではなく、一歩先の短期と、10年先の長期の視野を併せ持たなければならないということだ。これは、長期予測ではなく組織としての「意思」である。

 さらに、時代の変化とともに変わるためには、平時から変革できる組織であることが求められる。どんな組織でも、差し迫った有事の際は、存亡をかけた変革は必ず起こる。しかし、有事のみの受動的な変革だけでは成長を持続できない。自己変革できる組織は、平時から能動的に自らを変革しようとする力が働く。そのためには、“平時から変革の必要性に気づき”、さらには、一過性に終わらずに“変革を続ける”ことができるようになることだ。


持続的成長する組織の条件

 

《自己変革力の条件1》長い時間軸を持つ

 持続的成長を可能にする組織の一つの条件は、常に10年先を描きながら足元の変化を直視し、10年先と一歩先を併せ見るように「時間軸を変える」ことだ。持続的成長企業の時間軸の特徴は以下の3点だ。

時代を超えて変わらない哲学がある
10年先の姿、長期的ビジョンや方向性を持っている
足元の変化や業績に対してきわめて敏感である

 不確実な時代だからこそ、世の中に対する変わらぬ存在意義を明確にして、中途半端な将来像ではなく最終形を描く。そこで、まずは「最終的にどういう存在でありたいか」という組織の使命(ミッション)や存在意義を明示することが求められる。これは予測ではなく、意思としてである。

 ミッションは、時代が変化してもけっして揺らがない価値観であり、持続的成長の軸になるものだ。そのうえで、10年先、もっと遠い将来に続く方向性をビジョンやグランドデザインとして明確にすることである。

 多くの企業では予測の立てにくい状況で、10年先の長期ビジョンを打ち出すことに消極的になり、3年先の中期的目標一本に留まっている例が多くなっている。日本企業の多くが掲げる中期計画の存在自体を否定はしないが、中期目標が最終ゴールになっているかぎりは持続的成長の姿は描けない。中期計画は本来長期的グランドデザインを描いたうえで、過渡的な位置づけであるべきだ。つまり、中期計画を策定するプロセスにおいて10年先の姿をどこまで考えているかが重要になってくる。

 不確実な時代だからこそ、常に長期的展望を描き続け、方向性を明確にしなければならない。それと同時に足元の変化に敏感に迅速に適応し短期的にも成果を上げていく必要がある。つまり、一歩先と10年先を併せて見る時間軸を持って経営するスタンスが求められているのである。

 Jフロントリテイリングの奥田務氏は、長期と短期のバランスを図ることこそが経営者の使命だと説く。持続的成長に向けては、組織として現在(いま)と10年後を結びつけ併せ見ることができる時間軸を持つことが求められるのである。
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